2015年11月24日火曜日

老人介護(つづきのつづき)

 家内の母が亡くなりました。当地域では最高齢の享年105歳でした。本人の希望で葬儀は家族葬という形をとり、家で実施しました。
 おばあさんは非常に元気な人でしたが、少々肥満気味でよくコケ、それも原因してか90歳のころ腰を圧迫骨折し、それ以降は歩行が困難になりました。そして歩行器、杖などを使ってもっぱら家の中だけの生活になりました(老人介護)。それまでも家内は何かと手助けにおばあさん宅に通っていましたが、それ以降はますます目が離せなくなり、毎日通って掃除、洗濯、料理などの手助けをしていました。そして100歳のときに室内でまたコケ、左足付け根を骨折してほとんど歩けなくなってしまいました(要介護2)。そして唯一の楽しみはテレビだけとなり、一緒にいると頭がおかしくなるほどの大音響でテレビを見ていました。しかし身体機能は少しづつ衰え、最後は要介護5になり、そしてこの9月にベッドからの移動中にまたコケ、医者の勧めもあってとうとう可動式ベッドに寝たきりの生活になりました。それ以降は衰弱が目に見えて進行し、ついに11月に永眠しました。
 いま日本女性の平均寿命は86.6歳で世界第1位といわれます(2013年)。これは非常に素晴らしく誇れることではありますが、しかし健康寿命は74.2歳で、その間の12年余は日常生活が自由に送れず、人の助け(介護)が必要という実態を知ると、単純に平均寿命の世界一を喜んでばかりもおられません。おばあさんの場合はこの期間が4年8カ月ほどであり、平均からするとかなり短かったことになります。そしてボケることもなく、また、入浴以外はほとんど自分で着替えもでき、食事もでき、ポータブルトイレも使用できたことから、世間的にはほとんど世話のかからない方だったと言えるかもしれません。しかし家内のする世話を毎日横で見ていた私にすれば、介護生活はそうした見かけだけでは語れない、家族にとって肉体的にも精神的にも相当にハードなものであると感じます。まず、介護される側はもちろん、介護する方もほとんど自由がなくなります。そして自らの生活は大幅に犠牲にせざるを得なくなります。おばあさんの場合は認知症・医療といった面ではかなり救われましたが、しかし一歩間違っていたら、経済的にもかなり厳しい状況に追い込まれたかも知れません。特に最近、介護生活に疲れ、心中したり殺人したりのニュースをよくテレビで見かけますが、当事者の心中を察するととても他人事には思えず、同情を禁じえません。
 おばあさんは自宅での介護生活の間、介護施設の方々から本当に親切なアドバイス・サポートをしていただきました。また、病院のお医者さん、看護師さんたちからも、まさに昼夜を分かたず親身になった診察・処置をしていただきました。介護制度上の当然のサービスと言えばそうかもしれませんが、全く申し訳ないように感じることも再々あり、本当に恵まれていたと感謝しています。ただ、団塊の世代があと10年もすると後期高齢者の仲間入りをする現状を考えると、果たしてそのときこれだけのサービスが行いえるのか、日本の財政は大丈夫なのかと心配になります。改めて「ピンピンコロリ」で天命を全うしたいと願っているところです。

ぴんぴんころり地蔵

2015年11月11日水曜日

ちーたび(さつまいも掘り)

 ちーたび「さつまいもを掘って ヘルシー料理を作ろう!」を、10月最終日に実施しました。さつまいもは暖かい地方の作物であり、暖かいうちに取った方が良いと教えられ、気になっていたのですが何かと行事が重なり、結局、10/31(土)にずれ込んでしまいました。
 当日は大人5名、子供2名の参加を得て、まずさつまいも掘りに挑戦しました。最初に鎌、ハサミで大量の葉っぱを取り除きました。これはさつまいもの試し掘り(10/10)の経験によるものです。次に剣先スコップで畝の土を両側から掘り起こしました。これもその際にある人から教えられたことを試したもので、確かにいもは抜けやすく、キズが付きづらくなりました。さて本番のいもの引き抜きでは、誰かが大きないもの連なりを抜き出すと、本人はもちろん周りの人たちからも思わず歓声が上がり、それがみんなを次への期待に向かわせ、何か一体感のようなものが生まれてくるのが面白く感じられました。ツルに連なったいもは手で引き離すとやはりキズが付きやすいので、1個1個をハサミで切ってもらい、そのあとヒゲを取ってもらいました。これらも試し掘りをしたときの経験がものを言い、事前に行っておいて本当によかったと思いました。収穫したさつまいもは各自にビニール袋を渡し、いっぱいに詰めてお土産にしてもらいましたが、今回のさつまいも掘りで土に触れることは気持ちを和ませ、大人、子供いずれにとっても非常に大切であることを実感しました。
さつまいも掘りの後は公民館で、”すゞ菜”の女将の指導の下、さつまいも尽くしの料理、デザートを作りました。内容はのっぺい汁、コロッケ、サラダ、雑穀ごはん、スイートポテト(減糖)、いもんぶらん(ノンバター)などで、あまり調理に関心のない私にも魅力的に感じられる、アイディア満載のものばかりで、男性の参加者にも十分に楽しんでいただけたと思っています。特にのっぺい汁は前回の料理教室で学んだ食改レシピのだし汁を使って作ったのですが、少量の淡口しょうゆ、砂糖だけで具のうま味がよく出ていて、本当においしく感じられました。あるお母さんはお子さんが「家でだったら絶対に食べないと思われたのに、全部食べてくれた」と喜んでいました。なお、2人の子供さんは、いつも「子育てサロン」で小さい子供の相手をしている家内が世話をし、2人のお母さん方には調理に専念してもらいました。


 交流会ではまず私の方から、いまの日本人は食物繊維の摂取量が男女とも基準値を大きく下回り、5人に1人が便秘トラブルを抱えている。腸は健康の「かなめ」で、便秘は病気の原因になりやすい。排便を促すのに効果的なさつまいもをもっと普段の食生活に取り入れたり、ごはんには分付き米や雑穀など、食物繊維を増やす工夫をしてほしい。食物繊維には血糖値の急上昇を抑えたり、コレステロールを抑える働きもあるといったことをお話ししました。そのあとの意見交換では、「食事は命を頂くもの、できるだけ一物全体を頂き、農薬・添加物といった化学薬品は避けたい」、「糖尿病だったが”脱炭水化物”療法で回復した。野菜の良いことは分かるが続けるのが難しい。しかしいいだし汁で調味料を少なくする今日の料理は、野菜食を続ける参考になった」、「いい食品は高いといわれるが、食材にお金をかけるか医者にお金をかけるかの違い」、「調味料は高くても自然素材のものを考えたい」などの意見が出され、楽しい雰囲気のなか散会しました。

日本人の食物繊維摂取量の推移

2015年10月28日水曜日

アースガーデンみやづ2015

 京都府立の「海と星の見える丘公園」でアースガーデンみやづ2015が開かれました(10/24、25)。初日は汗ばむほどの陽気であったのが、翌日は一転、風がかなり吹き荒れ、気温も日なたボッコしたいほどの天候になりました。そんななか私たちは「エコの環」活動についての展示を行いました。ゲストに金子勝氏、藻谷浩介氏、金丸弘美氏などそうそうたる先生方をお招きしてのイベントでしたが、人出は非常に少なく、まして食品売り場の奥に設置された私たちの展示コーナーには、足を運んでくれる人はきわめて少なく、そんなことから多くの展示ブースでは説明者が席を離れて無人となり、ますます殺風景なコーナーになってしまいました。しかし私たちはせっかく足を運んでくれた人には説明をしたいし、「エコの環」野菜の販売も行っていたので、家内と私のどちらかは展示ブースに立ち、2日間でなんとか70~80人の人たちに説明をし、パンフレットを手渡しました。
食品売り場

 来てくれた人にはまずゼオライトを知っているか尋ねました。ほとんどは知らないというので、土壌微生物が棲みやすい粘土で生ごみを発酵分解させやすいことを、模型の処理箱を使って説明しました。そこまでは少し引き気味に話を聞いていた人も、次に処理箱を反転させて撹拌するところを見せると、それが面白いのかほとんどの人はそこで近寄ってきて箱を覗き込み、話を聞いてくれました。そして発酵肥料の現物を見せると、きれいに分解された肥料にみなビックリし、それを使って高齢者が安心・安全で栄養豊富な野菜を作り、地域で販売して利益を皆で分配していることを説明すると、大きく頷きながら「エコの環」を理解してくれました。次に阿蘇海を知っているか聞くと、7~8割は宮津市以外からの人たちで、多くが京都市や大阪などから来ておられたことから、ほとんどが熊本の阿蘇を連想されました。そこで阿蘇海は天橋立の内海であること、大量のへどろが堆積して泳げない、魚の取れない海になっていることを、「へどろのサンプル」を見せながら説明すると、みなさん一様に驚かれ、次にこのへどろからゼオライトとシリカゲルが合成でき、将来はへどろから作ったゼオライトで「エコの環」を回し、阿蘇海の浄化に役立てたいと話すと、非常に驚いて帰って行かれました。
私たちの展示ブース

 来場者が少なく拍子抜けのイベントで、却ってぐったり疲れてしまいましたが、しかし勇気づけてくれる人たちもいました。ある若いカップルは通り過ぎようとしていたのを呼び止めて説明したのですが、私の話にいちいち「ワー」とか「キャー」とか歓声を上げ、最後に「へどろってすごい資源じゃないですか。写真撮っていいですか」といって、展示物を何枚か写真に収めてくれました。また、大阪から来たという男性も私の説明に大きく頷き、バチバチ写真を撮りながら熱心に話を聞いてくれました。
 外人の男性もやってきました。日本語が分かるか聞くと「English only」というので、英語で説明することになりましたが、途中、「土壌微生物」、「発酵」、「へどろ」といった英単語が分からず、むちゃくちゃの英語で説明しましたが、「コンポスト(堆肥)! I got it(分かった)」と笑いながら帰って行きました。スペイン人の女性もやってきました。こちらは通訳がいたので日本語で説明しましたが、しかし通訳も前述の単語などは説明しづらいようなので、こちらも英語と日本語をごちゃ混ぜにして説明しましたが、なんとか理解してくれたようで、大きく頷きニッコリ笑って帰っていきました。



2015年10月18日日曜日

干し柿づくり

 毎年いま頃になると、家内たちは「干し柿」づくりにチャレンジします。「エコの環」野菜と一緒に持っていくと、結構喜んで買ってもらえるからです。しかし天候によるのかカビを生えさせることがよくあり、なかなか干し柿づくりといっても難しいようです。あるとき近所で干し柿をよく作っている人にカビの防ぎ方を聞いたところ、イオウを燃やしていぶすということでした。いってみれば殺菌・抗菌の力でカビを防ぐわけです。家内たちにそんな真似はとてもできず、これまでカビが生えれば捨てていたようですが、市販のものにはそうした処理をしたものが多いのだろうかと思うと、なにかゾッとします。今年の干し柿はいまのところ順調に出来上がっているようで、なんとかこのまま行ってくれることを願っています。
 家内と一緒に干し柿づくりをしている奥さんから、「柿の木の高いところに残ったカキを取ってもらえないだろうか」と頼まれ、先日カキ取りに初挑戦しました。カキ取りのために竹の先を斜めにカットし、その真ん中に割れ目を入れて二股をつくることを教えられ、まず右上図のようなカキ採取装置を作りました。この二股でカキがぶら下がる小枝を挟んでひねると、カキの枝は脆いので簡単に折れ、折れた枝を二股に挟んだまま下におろすとカキが収穫できるのです。木に梯子をかけて少し高いところに登り、そこからカキのぶら下がる小枝をねらって二股で挟むのですが、挟み方が浅いと折角取ったカキの枝が外れやすく、下で待ち受ける奥さんに渡す前に落下させてしまい、かなりのカキを無駄にしました。しかし慣れると面白いように取れるようになり、つい夢中になって買い物かごイッパイになるまで取り、あとでそれを運び下すのが大仕事でした。
翌日、奥さんから皮をむいた大量のカキを渡され、家内と大急ぎでカキを2つづつ紐で結び、とりあえず脚立に竹の棒を固定してそこに干すことにしました。しかし最近は近くにクマが出たとの放送があったり、庭がときどき何物かに穴を掘って荒らされたりすることから、低い位置では食べられてしまうということになり、軒下に棒を渡してそこに移すことにしました。家内はいろいろ別の用で忙しいため、棒の固定からそこへのカキの移動は全部一人でやりましたが、まさか自分が干し柿づくりをすることになるとは思ってもいませんでした。しかしつるされたカキと窓・壁にできるその影は、なんとも言えない懐かしさを呼び起こし、あったかい気持ちにさせられました。

2015年10月10日土曜日

さつまいもの試し掘り

 この春(5/30)、ちーたびでさつまいもの苗を植えました。その時はへなへなであった苗が、いまでは葉っぱが畝間までゴワゴワと埋め尽くすまでに成長し、今月の末にそのいも掘り体験のちーたびを計画しています。しかし果たしてうまく育っているかが心配であり、また当日に掘ったいもはすぐに食べてもらえないことから、事前に少し収穫しておこうと数日前、家内と試し掘りを行いました。家内は一度さつまいもを育て、見事にモグラに食べられた経験を持ちますが、私は全くの初体験で、家内の所作をまねながら引き抜きにかかりました。しかし簡単にスポと抜けることがある反面、多くは茎だけが取れていもが土中に残ってしまうので、土を手で取り除いていもを探し当て、あとは周りの土を丁寧に除去して掘り出しました。というのは雑に扱うとキズがつきやすく、また途中で折れたりしたからです。さつまいもは思った以上にうまく育っていて、それがとても嬉しく、感謝しながら5~6mを掘りました。ただ、いもをチョット掘ると葉っぱが抱えきれないほどの量になり、しかも茎が非常に複雑に絡まって隣の畝まで伸びたりしているため、いもを掘るより茎や葉っぱを取り除く作業が大変でした。そんな中でも家内は「食べられる」といって「芋づる」もせっせと採っていて、「さすがに女だ」と感心させられました。
 掘ったいもをプラスティックのケースに並べていると、通りがかりの人が「上手に育っているやないですか」と次々に立ち止り、中には「いものヒゲは取ったほうがよい」と親切にヒゲ取りを手伝ってくれ、「天日で2~3日干しなさいよ」といってくれる人がいるかと思うと、「陰干ししなさい」と忠告してくれる人もいたりして、どちらなんだと思うこともありましたが、皆さんのおおよその意見はさつまいもは10月中ごろまでに掘った方が良い(10月末は少し遅すぎるようです)、長期保存する場合は干した後、一つ一つ新聞紙にくるんで段ボール箱に入れ、暖かいところに置いて保存しろというものでした。どうもさつまいもは暖かい所の産物なので寒いのが苦手なようです。またある人はいもを掘る前に畝の両サイドにスコップを立て、中央を持ち上げるように土を起こしておくと、茎を引っ張るだけで簡単に抜けると教えてくれましたが、どうせなら掘る前に教えてくれと思ったことでした。いろいろ皆さんと話していると、生ごみ堆肥で育てている私たちのさつまいもを、結構気にかけておられたようです。
 ちーたびは10月31日(土)、9:30~14:00に参加費;1,500円(京都ちーびず応援券使用可)、募集定員;8名、集合場所;岩滝口駅前で実施します。いも掘りを体験した後、地産地消の店”すゞ菜”の女将と一緒に、さつまいも料理、さつまいものお菓子などを作って、おいしくいただく予定です。ふるってご参加ください。

2015年10月3日土曜日

うれしい話

 先日、「ピンと活き生き宮津ライフ」の申込用紙を配布するため、あるお宅を訪問したとき、奥さんからうれしい話を聞きました。そこのご主人は私たちの生ごみたい肥(宮津方式)に関心を持たれ、5年ほど前からゼオライトを使ったたい肥作りを行い、野菜を作っておられるのですが、その野菜を食べるようになってから、奥さんの身体の調子が非常によくなったというのです。奥さんはかつてかなり太っておられ、血圧、血糖値、コレステロール値に問題を抱え、また、「橋本病」という甲状腺の病気にもなっていて、神戸の病院まで通っておられたそうです。しかしいまでは血糖値、悪玉コレステロールのLDL値・総コレステロール値が正常に戻り、体重も減り、甲状腺の病気も病院の先生から「数値が非常によくなっていますね」と言われたというのです。血圧はまだ薬を飲んでおられるそうですが、飲む量が減ったといいます。奥さんに言わせると「エコの環」野菜のほかにいま一つ思い当たるのが、ご主人が作ったニンニクで黒ニンニクというものを作り、食べていることだそうです。ご主人とはどちらの効果だろうと話しておられるそうですが、ただ奥さんはご主人の作る「エコの環」野菜は非常に甘く、普通の野菜とは何か違うと感じておられるそうです。そして最後に「とても良いたい肥作りを教えていただき、大変感謝しています」と言っていただきました。

 以前、ブログ紫外線の害でも触れましたが、私自身も「エコの環」野菜を食べるようになってから、身体によい意味での変化を感じており、前述の奥さんの話はうれしいだけでなく、非常に納得できる話のように感じました。あらゆる病気はミネラル不足に起因すると言われます。しかし最近の野菜はミネラル不足のものが多いだけでなく、私たちは料理を作るとき、食材の肝心の栄養素を切ったり削ったりして捨ててしまい、捨てられる生ごみの方に実は栄養分は詰まっているのです。だからそれを肥料にした「エコの環」野菜にミネラル分が豊富なのは理屈であり、「エコの環」野菜を食べることで、身体の調子が良くなるというのも理屈だと感じるからです。また、「エコの環」野菜は露地栽培しています。そうした野菜はハウスものに比較して厳しい環境を生き抜いてきており、フィトケミカルの多いことが考えられます。フィトケミカルには抗酸化作用があり、身体のサビ防止(老化防止)に効果のあることが知られ、ガン対策にもなるといわれます。また、野菜に多い食物繊維は、免疫機能を司る腸の環境を整えたり腸の栄養分となり、健康回復に有効なことが考えられます。今後も先ほどの奥さんのような話を聞き集め、できるだけ多くの人に「エコの環」野菜の良さを伝えていきたいと考えています。

2015年9月23日水曜日

シミュレーション

 阿蘇海のへどろにすばらしい吸湿/放湿特性があり、蒸気吸着式ヒートポンプ(水蒸気を利用する熱の汲出しポンプ)を作ることが可能なことは、これまでにもなんどか触れてきました。水を高温な場所に置くと蒸発して、1グラム当たり600カロリーという大きな熱を奪います。火に水をかけると鎮火するのは水がこの大きな熱を奪うからです。この水蒸気をへどろに吸着させ、その大きな熱を冷却水で回収することで、例えば太陽光にさらされ高温となった屋根の熱をお湯として回収し、同時に室内温度を下げようとするのが「へどろヒートポンプ」の考え方です。これまでに基礎的な実験はほぼ終了し、実用化の実験を進める段階にあるのですが費用がかさむため、なかなか実験に移れず悶々としていました。そんなとき府立海洋高校の生徒さんたちに講義をする機会があり、その折、学習の教材用にと思い切って装置を学校に預けることにしました。そして先生に使い方を理解していただくため、2度ほど実験を計画したのですが、1回目は装置に破損が見つかり、2回目は急に激しい雨に見舞われ実験ができず、やっと先日、3度目の正直で実験を行うことができました。しかしその日はあいにくの曇天で条件的には最悪でしたが、目的は実験方法を伝えることだったので、まずは実験をすることで何とか実験の要領を理解してもらうことができました。
 ところでパソコンのソフトにエクセルという計算用ソフトがあります。データをインプットするといろんな計算が簡単にでき、またそれをグラフにしたりできます。このエクセルには計算式(関数)などもインプットでき、複雑な計算式でも簡単に計算してグラフ化できます。右下の図は3次式をグラフにしたものです。
いまへどろヒートポンプの原理を考えたとき、その仕組みは極めて単純です。つまり水を入れた容器とへどろを入れた容器をパイプでつないだだけの構造で、装置内で起きる現象も蒸発、吸着、伝熱など限られています。そこでそれら反応式をエクセルにインプットして組み合わせることで、へどろヒートポンプで起きる現象を数値計算できないかチャレンジしてみました。各反応式には適当な係数をかけ、計算結果を微調整しながら実験結果に近づけていくのです。これをシミュレーション(数値模擬実験)といって、規模は違いますが地球温暖化などの予測にもこうした手法が取られます。下図は海洋高校で行った実験のシミュレーションの結果で、計算結果と実験結果は非常に良い一致を示しています。こうしたことをいろんな実験に対して行っていくと、装置はどのような形状がよいかとか、水の量、へどろの量はどれほどがよいかなどが予測できるようになり、海洋高校の生徒さんたちのよい教材になるのではと期待しています。