トリオ・ロス・パンチョス |
2013年12月12日木曜日
けん制機能
前回、食材偽装について触れましたが、阪急・阪神ホテルズの社長さん始め、多くのホテル・百貨店の釈明会見を聞いて私がまず感じたのは、組織としての「けん制」・「監視」機能は一体どうなっているのかということでした。一般に組織と云うのは異質の集団から構成され、本来そうした集団同士には自ずと「けん制」機能が働くものです。例えば会社にはいろんな部や課があります。いずれも会社の利益を目指し、一致団結して頑張るわけですが、それぞれの利害は必ずしも一致せず、ときにぶつかり摩擦が発生します。そしてお互いを「けん制」、「監視」しあう関係が生まれ、結果的にそれがいい緊張感を生み、会社という組織の健全化、自浄作用につながっているのです。むかし高度成長期のころ、トリオ・ロス・パンチョスというラテン音楽のヴォーカルグループがいて、その甘いハーモニーが日本人の心をとらえ、何度も日本で公演を行ったことがあります。しかしその甘い歌声とは裏腹に、彼らは音楽のことではなかなか妥協せず、楽屋では常にケンカをしていたと聞いたことがあります。そうしたぶつかり合いが彼らの甘いハーモニーを醸し出していた訳です。いまは企業も社会的責任が問われるようになり、単に社内のこうした「けん制」・「監視」機能だけでなく、コンプライアンス(法令順守)といって、法令のみならず社会的規範・企業倫理まで社内統制に取り込む企業が増えているなか、「内部告発」もなく、社長も「偽装ではなく部署間の連絡ミス」といって済まそうとする態度には、食べ物を扱う、それも超一流企業の社会的責任が微塵も感じられず、自浄作用は一体働いているのか疑ってしまったからです。上部の締め付けがきつく組織自体が委縮してしまっているのか、あるいは業績が芳しくなく疲労困憊し、お互いに傷口をなめあう関係に陥ってしまっているのかも知れません。
ところで特定秘密保護法案が衆議院、参議院ともに、与党の力ずくの採決により通過しました。この法案については情報公開と日頃戦っている弁護士会、マスコミ関係者にとどまらず、各界からの反対が極めて強く、野中広務、古賀誠といった自民党の長老たちまでが、「なぜそんなに急ぐのか」と政府の対応を批判しています。いまは「テロ」という問題に常にさらされ、アルジェリア人質事件で苦杯をなめた政府にすれば、諜報機関をもつ外国からの情報を得るためには、なりふり構っておられないのかも知れません。世論の異常な反発を気にしてか安倍首相も、ゴリ押し採決の翌週の会見で、「いまある秘密の範囲は広がらない」、「知る権利は奪われない」、「もっと丁寧に説明すべきだった」などと釈明していますが、しかし国家のような組織になると、同じ組織とはいっても権力をもっているだけに、自浄作用が働かないと暴走しやすく、首相の力をもってしても歯止めが利かなくなるから怖いわけです。東日本大震災の復興予算が、まったく関係のない沖縄で使われるようなことが、まかり通ってしまうからです。独立性を担保した、しっかりした「けん制」・「監視」体制を作っておく必要があると思います。
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