かじられたブロッコリー |
シカの足跡 |
獣害といえば、果物は生き延びるのに「獣に食べられたい」とする道を選び、野菜は「食べられまい」とする道を選んだと聞いたことがあります。植物は日照を奪い合って生きているため、果物にとって実が親木の近くに落ちてそこに芽を出すことは、繁殖という点で好ましくありません。そこでできるだけ目立つ色と甘い香りを放って動物を引き寄せ、動物に種ごと食べてもらって、遠く離れたところに糞と一緒に種をまいてもらう道を選んだというのです。そのため種は食べられては困るので、噛むとひどく苦味のするシアン系の毒物を含ませているといいます。一方で野菜は、「シュウ酸」のアクで消化不良を起こさせたり、苦味で虫や草食動物を寄せ付けなかったり、生食すると口の周りがかゆくなったり、のどがいたくなったりして、食べられないよう身を守っているそうです。ネギ、玉ネギ、ニラ、ニンニクは「アイリン」という成分が腐敗臭、刺激臭を発して外敵から身を守り、タケノコは「チロシン」が苦味を発してイノシシを撃退すると云います。ジャガイモの芽には「ソラニン」、豆には「レクチン」という毒があり、野菜を調理する本来の目的は、こうした毒やシュウ酸のアクを消すことにあるそうです。こうしたことを考えると、私たちの「エコの環」野菜はそうしたアク、苦味以上に甘みがあって美味しかったのか、あるいは襲ったシカはアク、苦味が分からないほど飢えていたのか?
南雲吉則;空腹が生き方を教えてくれる、サンマーク出版、2013
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