2014年8月7日木曜日

老人介護

 先日テレビで老人介護の問題を扱ったドラマをやっていました。「早くお迎えに来てほしい」、「早く死にたい」という老人たちが急死したことに疑問を感じた新聞記者が、老人たちの診察をしていた医者を疑うが、犯人は介護問題に熱心な別人だったと云うストーリーです。私たちは老人を前に「長生きしてネ」とか「いつまでもお元気で」という言葉を簡単に口にします。これが幼い孫とか無縁の若者から発せられる言葉だったらともかく、その老人に関わる縁者の言葉となると、介護に疲れ切った者や老人自身にとって、ビミョウな問題であることを伝える内容でした。
 いまから20年ほど前、隣組の集まりで今は亡きある人が、「都会にいる者は年に一回か二回土産を持って帰ってくればよいが、田舎で親と暮らす者はそんな訳にはいかない」と云っておられました。当時は何のことかよく理解できずにいましたが、いまわが家も家内の母親で近くに独居する103歳のおばあさんを抱え、ことの大変さをやっと理解できるようになりました。
 おばあさんは屋内でコケたり、圧迫骨折で10年以上前から歩行が困難な状態にありました。そんなことから家内は毎日手助けに通っていましたが、2年程前にまたコケ、ほとんど歩けなくなってしまいました(要介護2)。しかし自分でなんとか長椅子に移動したり、着替えをしたり、自分で食事を食べたり、ポータブルトイレで用を足すことはできます。まだまだ健啖でボケもなく、テレビを独り楽しんで見ています。歩けないとはいえ寝たきりや認知症に比べればずい分助かっています。ただお風呂だけは慣れない力仕事になるので、週3回ヘルパーさんに面倒をみてもらっています。このように書くと第三者には介護にあまり手がかからず、気楽に長寿を楽しんでいる百寿者のように映ります。しかしそれを支える家内にとっては、三度の食事の仕度から掃除、洗濯、買い物、屋敷周りの清掃、その他もろもろの些事など、わが家と2軒分の仕事を毎日こなすわけですから大変です。しかも毎日顔を突き合わせれば何かと軋轢も生じます。例えばおばあさんにすれば娘にあまり面倒を賭けたくない、まして第三者の世話にはなりたくないとの強い思いから、自分でできることは自分でやり、お風呂もヘルパーの力を借りず自分で入ろうとします。その気持ちは十分に分かるのですが、しかし家内にすれば歩けない身でひっくり返って大けがをされたら困るし、実際にこれまでも何度もコケて身動きが取れなくなっているので、自分がするからジッとしていてくれとつい口論になってしまうのです。そしてつのるイライラからつい当り散らしたり、あるいは「自分は悪い人間なのだろうか」と涙を流したりすることになります。私も家内の一生懸命な姿、疲れた切った様子を毎日見ているだけに、「よくやってるヨ。悪いことないヨ」と慰め、なだめることに神経をピリピリさせることになります。ただ残念かなこうした苦労は都会で離れて暮らす兄弟にはなかなか伝わりません。「いつも世話をかけて申し訳ない」と口では云っても、そうしたことを経験してないと想像力が働かないのです。だからたまに帰って来て、「元気やないか、高齢者の新記録を作ったらどうや」とか、「栄養のあるものを食べているか」など、こちらの苦労を知ってか知らずかの「ノー天気」な言葉を聞くと、それがまた家内をイラつかせることになるのです。こうしたことは隣近所の介護老人を抱える家ではどこも似たり寄ったりの様で、苦しい胸の内を吐露されることもしばしばです。確かに親にすれば「まだまだ自分はしっかりしている」という気持ちがどうしてもあると思います。しかし子の世話にならないと何もできない状況に陥ったら、そのときはそれがたとえ屈辱的でありつらいことであっても、それを素直に受け入れ、赤子のようにすべてを子にゆだねる覚悟も必要なのではないか、それが「老いては子に従え」という言葉ではないかと家内と話し合ったりしています。
テレビニュースによると日本女性の「平均寿命」は世界一で、男性の平均寿命も初めて80歳を超えたそうです。しかし日常生活が支障なく送れる「健康寿命」となるとどちらも10歳ほど若くなり、10年間ほどは介護や入院が必要であることが分かります。これが本人、介護者はもとより、国にとってどれほどの負担であるかを考えると、平均寿命を単純に喜んでばかりもおられません。私たち高齢者自身がもっと積極的に「ピンピンコロリ」を目指すべき時代になったと考えられます。宮津市ではこの8月から65歳以上の高齢者を対象に、「”ピンと活き生き”宮津ライフ」という運動を始めました。食生活や運動に関心を持ってもらうと同時に、高齢者の技能・知識・チエを使って「少エネ」、「少資源」な生活を見つけ、明るい町づくりを進めようとするもので、高齢者に生きがいを与え、健康寿命を延ばそうとする試みです。私たちの「エコの環」も活動内容に含まれています。


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