2015年1月23日金曜日

地方の時代

 前回「里山自然主義」という本の内容に触れました。その本を買ったとき、横に積んであった「地方消滅」というショッキングなタイトルの本も目に留まり、同時に買って正月休みに続けて読んでみました。岩手県知事、総務大臣を歴任され、現在「日本創生会議」の座長である増田寛也氏が書かれた本で、生産年齢人口(つづき)でも触れましたが、昨年5月頃にマスコミで大きく取り上げられた日本創生会議の試算内容を記した本です。
 本によるといま日本では、出生率の高い地方から日本一出生率の低い東京(1.13と際立って低い)への人口の一極集中が進み、それにより人口の再生産を担う「20~39歳の若年女性」の流出が進み、このままではまるで宇宙空間で多くの星がブラックホールに吸い寄せられて消滅していくように、日本の人口も東京に吸い寄せられて人口減少が加速化する恐れがあると云います。日本のこうした「極点社会」化(日本全体の人口が大都市圏に凝集する現象)は、下図からも分かるように先進諸外国の中でも際立っていて、そんな中で直下型地震でも起きたらまさに日本は壊滅してしまう訳で、増田氏は地方の中核都市に「ダム機能」を持たせ、人口の流出をそこで食い止め、その上で大都市から若者を「呼び戻す機能」、「呼び込む機能」の強化を図るべきだと提案されています。
 
私の住む宮津市も人口の減少に歯止めがかからず、市といいながら現在は2万人を切る有様です。私の組でも私が引っ越してきたころは13軒あり、組長を引き受けるのは10年に一度くらいの頻度でしたが、それが知らぬ間に歯が抜けるように欠けていき、今では7軒しかありません。しかも組長の定年は70歳なので(私は一昨年71歳で引き受けましたが)、いまは組長になる資格者は3人しかおらず、それもあと数年で1人になってしまいます。そこで今年から隣の組と合併することになりましたが、しかしそれもいつまで持つか分かりません。この間に地元では国鉄が第三セクターのKTR(北近畿タンゴ鉄道)に変わり、診療所が無くなり、日通・信用金庫・農協の支店が無くなり、商店街もほとんどが店を閉めてしまいました。つまり車が運転できれば良いのですが、そうでないと今でも「生活難民」に陥る危険性があり、人口問題は切実といえます。
 一方、宮津市でも「その美しい自然に引かれた」といって、東京や関西圏から移り住んで来られた方々を結構見かけます。また、大学を出て企業に勤めた後、Uターンして帰ってこられた方たちも結構います。あるNPO法人の調査によるとここ数年、どの企業も欲しがるような優秀な人材が平気で会社を辞め、地方に移り住む現象がアチコチで起き始めていると云います。また、起業を考える若者の5人に1人が農業や漁業に挑戦したいと考えていて、物質的豊かさに満足しない若者が増えてきているのだそうです。案外これからは「地方の時代」なのかも知れません。私たち地方に住む者が魅力ある生き方・暮らし方を示せれば、地方に人を「呼び戻す」、「呼び込む」時代になったのかも知れません。「エコの環」づくり、「ピンと活き生き宮津ライフ」にやりがいが出てきました。

地方消滅;増田寛也、中央公論新社、2014




 

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