新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
正月休みで帰ってきた長男がスマホである写真を見せてくれました。そこには食事をする男性が写っていました。長男によると昨年出張で東京のホテルに泊まったとき、バイキング形式の朝食に行くと中国人観光客で一杯だったそうです。しかし彼らのマナーがあまりにもひどく、頭にきてある男性の食事中の写真をこれ見よがしに正面から撮り、自分はコーヒーだけ持って部屋に引き返したと云います。云われてみれば写真の男性は山盛りの皿に口を付けて食べています。長男が語るマナーの悪さに思わず私たちも顔をしかめましたが、しかし話しを聞きながら私自身は1970年頃のある新聞記事を思い出していました。当時、日本は海外旅行ブームが始まったころで、海外に出かけた多くの女性がフランス、イタリアなどの有名ブランド店に押しかけて買いあさり、ある店でそのマナーの悪さに腹を立てた店員が品物を床に投げると、それに女性たちがワッと群がったという記事です。「衣食足りて礼節を知る」といいますが、当時の日本人はまだみな「ウサギ小屋」に住んでいて、礼節をわきまえるだけのゆとりがなかったのだと思います。そんな私たちにいまの中国人を笑う資格はないわけで、むしろ中国人が礼節をわきまえるようになるころには、地球上のエネルギー、資源が無くなってしまっているのではないか、それが心配されます。いま地球上には70億の人間が住んでいて、みなが大量生産、大量消費のアメリカ型生活を望んでいます。しかし全員がアメリカ人並みの生活をすると「地球が5個必要」と云われ、地球資源の枯渇は決して遠い将来の話しではなく、「キナ臭い」問題の発生が心配されるからです。だから私たち先進国と云われる国ほど持続する社会を率先して模索し、始めていく必要がありますが、昨年の大みそか、たまたま立ち寄った書店で平積みされた書籍の中に、「里山資本主義」という本が目に留まりました。手に取って長文の「はじめに」を読むとなかなか面白く、早速購入して正月休みに読んでみました。
本のタイトル「里山資本主義」という言葉ですが、いま先進国から後進国まで、世界がドップリ浸かっている「アメリカ型資本主義」(エネルギー、資源をじゃんじゃん使って物を大量に生産し、それを大量に消費するマッチョでやくざな経済)に対し、田舎でいままで価値がないと見捨てられてきた資源に新たな価値を見出いだしたり、あるいは田舎で人間らしい生き方を取り戻そうとしたことで動き始めた、全く新しい「かたぎの経済」を意味しているそうです。そしてこうした経済が日本の過疎地で、そこの高齢者、あるいは都会生活に見切りをつけ移住してきた若者たちにより、じわじわと確実に広がっているというのです。例えば林業で発生する「木くず」、従来は産業廃棄物でしかなかったものをエネルギー源として生かすことで、岡山県真庭市は林業の再生とバイオマスの町として生まれ変わったと云います。同様のことを国家レベルで実施し始めたのがオーストリアで、林業のバイオマスで脱化石燃料、脱原発を強力に進め、EU加盟国最低の失業率、一人当たりの名目GDP世界11位(日本は17位)を実現しているそうです。その他詳しい内容は本に譲りますが、その中で紹介されている広島県庄原市の高齢者福祉施設の取り組み、つまり地域の高齢者が生産する農産物を施設が食材として購入し、そこで出た生ごみは肥料にして高齢農民に還元するという内容は、まさに私たちが行っている「エコの環」そのものであり、その他金銭換算できない価値の増殖として例示されている、高齢者による高齢者の介護、花壇を作る老人会、小学生の通学時の見守り隊、幼稚園・小学校で遊びを教えるおじいさんなどは、まさに”ピンと活き生き”宮津ライフで活発化しようとしている内容です。新年早々、私たちの取り組みが決して間違っていないと励まされた思いで、非常にうれしく感じた次第です。
里山資本主義;藻谷浩介、NHK広島取材班、角川ONEテーマ21、2014
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