2015年6月30日火曜日

生活習慣病対策「和食」

 先日のテレビで、食事において「一物全体」をいただくことの大切さを放映していました。一物全体というのは食料として頂く動物、植物の全体を指します。つまり生物として成長したものの全体を食べた方が、栄養バランスの取れたものがいただけるという意味です。テレビではトウモロコシのヒゲや、実を取った後の芯まで料理に使っていました。確かに大根にしてもお米にしても、捨てる葉っぱや米ぬかの方に栄養は偏っており、できるだけ一物全体をいただく方が栄養バランス的にはよいわけです。その点、肉や大型の魚などは全体のごく一部を食べることになります。それが原因かどうかはわかりませんが、面白い話があります。
 20世紀初頭の第一次世界大戦時、酪農国家デンマークは海上を封鎖され、食料が輸入できなくなったそうです。そこで牛、豚、鶏などの家畜をすべて処分し、家畜に与える穀物や野菜をすべて人間に回したそうです。肉を1キログラム作るのには少なくても7~8キログラムの食糧が必要で、大変不経済だからです。その結果は病気が激減し、平均死亡率も大幅に減少し、歴史的健康時代を迎えることになったそうです。一方、ドイツは逆に穀物や野菜を家畜に与えて食肉化し、それを食べて敵軍を蹴散らそうとする政策を取ったそうです。しかしその結果は慢性疲労や病気が蔓延し、ドイツは敗戦国になったというのです。ブログ長生きするには肉を食べるな? 食べろ?でも、明治政府の招へいで日本に長期滞在したドイツ人医師ベルツ氏の、日本における興味深い実験を紹介しました。低たんぱく、低脂肪の粗食を食べていたお抱え人力車夫に、ドイツ栄養学に基づいて肉を食べさせたところ、それまで毎日40キロを走ってもなんともなかった車夫の疲労がはなはだしく募り、走破できなくなったというのです。そこで食事を元に戻したところ元通りに走れるようになり、ベルツ氏は一見「粗食」に見える日本食の威力に脱帽したという話です。これらの話は人間にとって本当に必要な食べ物は肉類ではなく、穀物と野菜であることを教えています。
次回ちーたびのチラシ
いま和食が世界で大変なブームになっています。和食はお米、野菜、発酵食品をベースにしていて、現代人に決定的に不足しているといわれるミネラル・食物繊維が豊富で、第二の脳といわれる腸の調子を整え、血糖値・コレステロールの上昇を抑え、免疫機能を高めてくれます。また、野菜に含まれるフィトケミカルは体内で抗酸化作用の働きをして、老化やガンを予防してくれます。しかし肉とか魚には食物繊維が含まれていません。だから便秘気味の人や便秘になりがちな高齢者が多く食べると、体内で腐敗して毒素をまき散らすことになりかねません。また、魚はコレステロールや中性脂肪を低下させるEPA、DHAを含んでいるため、食べることを推奨されますが、大型になると食物連鎖により水中に微量溶存する有毒物質(PCB、DDT、ダイオキシン類など)を、数百万倍にも濃縮して蓄積しているといわれ、食べるならできるだけ濃縮の少ない小魚で、一物全体をいただくようにした方がよいといえます。和食は食物繊維が多いため、よくかんで食べる必要があります。このよくかむということが消化だけでなく、脳の活性化にもとても大切なのです。食事は一口30回よくかんで、感謝しながらゆっくり食べましょう。それがどんな薬・サプリメントよりも身体・精神面にとって有効だからです。
 7/12(日)に吉津地区公民館(宮津市)において、宮津市食生活改善推進員協議会会員で管理栄養士の高岡弘美氏を講師にお招きして、「生活習慣病対策 和食の料理教室」を開催します。食材には私たちの「エコの環」野菜をできるだけ使いたいと考えています。時間は10時~14時で、会費は1,500円、定員10名です。ふるってご参加下さい。

2015年6月16日火曜日

高校生への初講義

 先日、府立海洋高校に出かけ、海洋工学科海洋技術コースの生徒さん19名に、阿蘇海のへどろからの人工ゼオライトの合成、へどろを使ったヒートポンプの作製について約2時間、講義をしてきました。海洋高校の生徒さんが阿蘇海で、水質浄化に効果のあるアサリの育成やアマモ場の造成に取り組んだり、アサリの外敵であるヒトデを除去し、それで堆肥づくりをされていることは伝え聞いていて、同じ阿蘇海を研究対象にされていることで関心はありましたが、特に接触のないままいました。しかしたまたまある会合で海洋高校のある先生とお近づきになり、それがきっかけで今回の話になった次第です。
 私も人に話をする機会はときどきあり、それこそ青年から老人までいろんな階層の人たちに話をしてきました。しかし高校生というのは初めてで、簡単に引き受けたもののいざその日が近づいてくると、どんな話の内容にしたらよいかいささか不安になってきました。やはり高校生というからには、話のなかに物理や化学で習っていそうなことをできるだけ取り入れ、そうした原理や法則、化学式が実際の応用(人工ゼオライトの合成、ヒートポンプの作製)ではどんなところにどう使われ、どう活かされているかを学んでもらうことが大切ではと考えたからです。かといってあまり力を入れすぎても興味を削ぐことになり、いろいろ悩みながら話の要点を3頁にまとめ、事前に先生に送ってコピーしていただき、当日はそのレジメにそって話を進めました。

講義の様子
装置を使っての説明
最初はへどろの成因やその性質から話を始め、なぜ人工ゼオライトが合成できると考えたか、ゼオライトの特徴やなぜそうした性質をもつのか、その特徴を活かした実際の応用例、また、へどろにすばらしい吸湿/放湿特性のあること、その性質を利用するとヒートポンプが作れ、温暖化対策になることなどを、教科書に載っていそうな法則や化学式などをアチコチに盛り込みながら話しました。こちらとしては生徒さんの反応を見ながらのぶっつけ本番の講義でした。しかしゼオライトの特徴となる元素の結合の話や、モル(分子量)濃度の計算の仕方、エアコンの仕組みの話などでは、眠そうにしていた子までが身を乗り出して話を聞いてくれ、とてもうれしく思いました。そして質問があるか尋ねるとすぐ何人かが質問をしてくれ、また、休憩時にも質問にやってきたり、人工ゼオライト合成時の途中サンプルを何人かが見に来て、濃紫色の廃液や海水による廃液処理時の沈降物をジッと眺めていたり、その真剣な表情がとてもかわいらしく感じられました。ヒートポンプの説明でも「気化熱」とか「凝縮熱」、あるいは「ブラウン運動」といった話にイチイチ合点しながら、一生懸命話を聞いてくれました。
 最後は数人から感謝の言葉をもらい、全員で敬礼され、とても面はゆい、しかしうれしい気持ちで帰ってきました。実験となるといろいろ実験環境的、あるいは時間的制約があると思いますが、へどろの有効利用を学校の学習に加えて頂ければ、阿蘇海を舞台にまさに地域貢献型の総合学習ができるのではと、今後の活躍を期待しています。