食品汚染

  最近、幼稚園や小学校で落ち着きがなく、イライラしている子供が増えていると云います。先生の話を最後まで聞けない、すぐ立ち上がってキョロキョロする、よく教室を抜け出す、怒りっぽい、突然変な声で叫ぶなど、以前なら家庭でのしつけが悪いと片づけられていた問題が、どうも脳に何か障害が起きているのではと云われるようになりました。アメリカではこれはADHD(注意欠如症)といって、脳内の神経伝達物質の異常による神経性疾患とされ、現在200万人以上の子供がADHDと診断されているそうです。そしてこの原因にビタミン・ミネラルの不足に加え、食品添加物や農薬その他の化学物質の摂取が挙げられています。食べ物の影響は大人より成長盛りの子供に、そして生まれくる胎児に現れやすいのです。
食品添加物
  日本は1958年のインスタントラーメン発売以来、食品添加物の時代に突入したと云われます。食品に化学合成品の使用は原則禁止ですが、厚生大臣が支障がないと認め指定したものについては使用が認められ、現在、保存料、着色料、漂白剤といった用途・目的別分類で31種類、約350品目があるそうです。1日3回ごく平均的な食事をしたとして、大体70~80品目の食品添加物という名の化学物質が体内に摂取され、1人年間4キログラム以上を体内に蓄積しているそうです。食品添加物として厚生大臣の認可を得るには、事前に毒性試験(急性、慢性)で安全性が確認されます。しかし急性試験は短期に簡単にできるのに対し、慢性試験は長い時間と多額の費用がかかり、どうしても申請に必要な最小限のデータに留まりがちです。したがって実験に使う動物と人間の生理の違い、あるいは実験のやり方によっては、催奇性や発がん性など重大な有害性を見逃すことがあります。また、最近はブドウ糖、クエン酸、アルコールなど、かつては天然からしか作れなかった物質が人工的に簡単に作れるようになり、食品添加物にも多く使用されています。しかし化学構造は天然品と変わらないといっても、どんな物質も100%純粋なものはなく、わずかながら製造プロセスに応じた不純物が混ざっています。この微量の不純物についてはほとんど分析もされず、安全か危険かは全く分かりません(枯葉剤に混ざっていた不純物のダイオキシンと同じ)。長く使ってみないと安全性は分からないのです。これまで厚生省の許可をもらいながら、その後有害性が立証され使用禁止になった添加物は、1965年以降だけで17品目もあると云います。これらはみな不思議な病状や死亡例といった大きな犠牲を払った後に再調査され、使用禁止になったものです。厚生省のお墨付きがあるからと云って安心はできません。見た目がきれいだから、手軽だから、安いからといって安易に加工食品、添加物の多い食品に手を出すのでなく、食事はできるだけ自然の新鮮な食材を用いて自分で作りたいものです。どうしてもそれができないときは、極力添加物の少ない良心的な食品を選び、生産者を選別、育てていくことが大切ではないでしょうか。
農薬
  生き物は本来厳しい自然環境(弱肉強食、自然淘汰)の下に生きており、果樹は重過ぎる実をつけず、動物は敵から逃げるため引き締まった体をしています。人間が作る農産物にしても本来は土つくりと水管理のみをして、あとは自然に任せて栽培するのが元気な農産物を作る基本と云えます。しかしこれでは農産物を効率的に大量生産できませんし、見栄えの良いものを旬以外の時期に作ることもできません。経済効率を考えると化学肥料を多く使ったり、密に植えたり、ハウスで覆ったりと促成的栽培になりがちです。すると農産物はひ弱となり、すぐ病気になって大量の農薬が欠かせなくなります。その結果は農村からゲンゴロウ、ドジョウ、タニシ、ホタルが消え、共生すべき生物種が減ってしまいました。また、使用禁止のBHCやDDTがいまも食物連鎖によって我々の口に入り、へその緒を通して胎児を汚染していると云います。一方、日本は食糧自給率が低く、食糧のほとんどを海外から輸入しています。輸入に際しては約160品目の残留農薬が税関で検査されますが、人手が全く足りず多くの食糧はフリーパス同然で、日本で使用禁止の農薬を見逃すことも少なくないといいます。貿易拡大に伴い食糧の輸入はますます増えると考えられますが、特に穀物は長期貯蔵し、大洋を超えて長距離・長時間かけ移送されるため、この間にポストハーベストとして使用される殺虫・殺菌剤などの農薬は、食品添加物より毒性の強いものが多く、残留量も多くなります。輸入農産物はできるだけ控えるべきですが、現実的には非常に難しい問題となりつつあります。我々は生ごみ堆肥で無農薬の野菜・コメ、また、硝酸塩含有量の少ない野菜の栽培を目指し、少しでも食品汚染を免れた食材を提供していきたいと考えています。

永田、高畑、平田、福原:母乳と和食で家中病気知らず、ペガサス(2001)
鈴木雅子:その食事ではキレる子になる、河出書房新社(2001)
武者宗一郎:見えざる恐怖  食品汚染、講談社(1981)

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