2014年8月30日土曜日

ガン対策

 日本ではガンは一生のうちに2人に1人がかかり、3人に1人が死亡する病気で、1981年以降、死因のトップになっているそうです。2010年に新たにガンにかかった人は推計で80万人を超え、記録が残る1975年の約4倍にもなる急増ぶりだそうです。それにも拘らず国民の関心は低く、正しく理解されていないといった背景から、文部科学省はガン教育のモデル事業を全国の70の小中高校で始めるそうです。京都府では国に先駆け昨年度から「生命のガン教育」事業を始めていて、医師とガンの経験者が講師として学校を訪問し、医師がガンの基本知識を解説し、経験者が闘病を通しての生きる大切さを語る授業を、昨年度は20の小中高校で実施したそうです。生活習慣の大切さを子供のときから教えることは極めて重要であり、非常に前向きな取り組みではないかと思います。
 ところで先日テレビで、「BNCT(ホウ素中性子補足療法)」というガンの放射線治療についてやっていました。従来の放射線治療ではガンの周りの正常な細胞まで破壊してしまうのに対し、BNCTはガン細胞だけを破壊できる画期的なもので、日本が開発した世界最先端の技術ということでした。しかし手術は巨大な原子炉の中に患者一人を入れて行うため費用が巨額になり、そこで新たにサイクロトロンを使ったコンパクトな装置を開発し、それを近々、原発事故の被災地である福島に設置して、放射能の全く違った利用技術として世界に情報発信していくとのことでした。ガン治療については抗がん剤でも、ガン細胞だけを狙い撃ちできる「分子標的薬」なるものが開発されているそうです。ただ、こちらは患者の遺伝子タイプによって効力が違ったり、安全性、耐性、副作用などにまだ課題が多く残されているようです。また、ガンの早期発見については、1回の採血で13種類のガンを見つける検査技術の開発が、NEDOと国立ガン研究センターにより約79億円の巨費を投じて始まるそうです。上図を見て分かるように日本ではガン患者は増える一方で、だから何とかしなければというので巨額の研究費を投じ、新たな治療法の開発を進めようとする努力はよく分かります。しかしガンになってから、つまりガンが目視できるほどの大きさになってから治療したのでは、まして人間が行う治療では完治を期待するのは無理であり、医療費だけが膨らんでいくことになりかねません。
 私たちの身体は約60兆個の細胞で作られています。各細胞にはミトコンドリアと云う小器官があり、そこでエネルギーを作っていますが、メタボで内臓脂肪が異常に増えたり、過剰なストレスにさらされたり、酸素の取り込みが不十分であったり、身体を冷やしたりするとミトコンドリアの活動が不活発になり、それが細胞にガン化のきっかけを与えることになると云います。一方でミトコンドリアには細胞に異状が発生したり、それが他の細胞や器官に悪影響を及ぼしそうな場合、アポトーシスといってその細胞を自滅させる機能があると云います。また、身体を温めると免疫機能が高まり、NK細胞によるガン細胞への攻撃力も増すと云います。つまり私たちの身体には食事を腹八分に抑えたり、野菜を多く食べたり、運動をしたり、お風呂で体を温めたりしてミトコンドリアを元気にしたり、免疫システムを活発にするような生活習慣を心がけていれば、ガンがまだ細胞レベルの大きさのときに、確実にガンをやっつける機能が備わっており、進行ガンでも回復できると云います。正しい生活習慣を心がける予防医学にこそ、お金を投入すべきではないかと思います。
 ところでアメリカでは自分の遺伝子を調べ、将来ガンになりそうだと分かったら健康な内に乳房や卵巣を切除するガン対策が行われていて、女優のアンジェリーナ・ジョリー(ブラッド・ピットの奥さん)が乳房の予防切除を行ったことから、日本でも広く知られるようになり、遺伝子検査を受ける人が増えつつあると云います。しかし私たちの寿命を決めるのは遺伝的要素が30%で、残りの70%は環境因子、つまり生活習慣だと云います。たとえ遺伝的にガンを発症しやすい素因があっても、その体質にあった正しい生活習慣さえ励行していれば病気の予防だけでなく、却ってそうした素因が寿命の延長に有利に働くのだと云います。いずれにしても私たちの身体は遺伝子ですべてが決まるほど単純ではなく、まだまだ知られていない未知の分野が多いのであり、健康な内から身体の一部を取り除くようなガン対策は、あまりにも拙速な過剰防衛であり、神に対する冒涜行為だと思います。

大谷  肇  ;長生きしたければミトコンドリアの声を聞け、風詠社、2013
斉藤真嗣;体温を上げると健康になる、サンマーク出版、2009





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