2015年3月5日木曜日

介護難民

 先日のテレビで年金の「マクロ経済スライド」を取り上げていました。厚生労働省がこの4月から発動することを決めたからです。この制度は小泉首相のときの2004年に、「100年安心プラン」として導入されたものです。年金財政の大幅な悪化を避けるため、インフレ時に一定の調整額を年金支給額から差し引いて年金の伸びを抑え、その代り現役世代の所得の50%以上は受け取れるようにしようとしたものでした。しかし日本経済は長くデフレが続いたため、これまで一度も発動されたことがなく、そのため年金の支給額は現役世代収入の62.7%と高止まりしていて、若い世代への負担のしわ寄せと不公平感が問題になっていました。今度の発動では賃金・物価の上昇分に合わせ、本来なら2.3%アップのところを0.9%の上昇に抑えるそうです。
人口構成(2015年)

 いま国会では来年度予算案が審議されていますが、予算総額96.3兆円のうち社会保障費が31.5兆円、国債の償還・利払いが23.4兆円で、両者だけで歳出の6割近くを占め、税収の54.5兆円も両者で使い切ってしまう内容になっています。これから高齢化がますます進むなか、日本の財政は極めて厳しい状況にあることが分かります。
 右図はいま現在(2015年)の日本の人口構成を示しています。いわゆる「団塊世代」とその子供たち「団塊ジュニア世代」のところに、大きなピークがあります。この2つの世代が生産世代(15~64歳)を代表していた1995年頃は、生産年齢人口が8,716万人と史上最高を記録し、介護が問題となる後期高齢者も717万人ほどで、12.2人で1人の後期高齢者の面倒を見ればよかったわけです。しかしピークの一つの団塊世代が生産世代を抜けたいまは、高齢世代の急激な増加と生産年齢人口の急激な減少が同時に起きたため、その比率は実に4.7人に1人となり、団塊世代が後期高齢者となる10年後の2025年には3.3人に1人となって、要介護者・ヘルパーの急増、いわゆる介護の爆発が予想され、生産世代はもちろん、日本全体に非常に大きな負担が生まれてきます。
 四国で最も人口の少ない町、徳島県の上勝町では、「つまもの」といわれる料理に添える葉っぱを高齢者ビジネスにすることに成功し、80歳を超える高齢者が元気に働いているそうです。そして町の老人ホームは入居者が少なく、閉鎖されていると聞きます。高齢者問題を解決するカギはこのように、いかに高齢者に生きがいを持たせるかにかかっています。私たちの「エコの環」も高齢者の生きがいを狙ったものであり、何とか早くお役に立ちたいと考えています。

* 藻谷浩介;デフレの正体、角川oneテーマ21、2011



 




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