2014年11月18日火曜日

イベントへの初参加

 去る11月15、16日の連休に、宮津市にある「丹後海と星の見える丘公園」で「アースガーデンみやづ2014」が行われました。人と自然とのつながり、暮らしを見つめ直そうというイベントで、竹資源を考えるワークショップ、自然とのふれあい体験、地元食材を使った模擬店、音楽ライブ、トークショウなどが行われるなか、私たちが関わる「ピンと活き生き宮津ライフ」も出店することになりました。その趣旨は「いま日本も宮津市も超少子高齢社会を迎え、このままでは沈没しかねない。それを避けるには高齢者が次世代に負担を残さないよう、まずは元気であることに努め、できるだけ地域に貢献していく必要がある」というもので、私たちが生ごみ堆肥で作った「エコの環」野菜、その野菜を使った「ごった煮汁」(右上)、ご飯に野菜を混ぜ込んで焼いた「ご飯バーグ」(右下)、オカズにピンきらを始め「エコの環」野菜を使った幕の内弁当などを販売しました。どれもこのイベントに向け私たちが考えたオリジナルなものばかりで、味は砂糖を使わずに塩味だけにこだわりました。このイベントで私たちが訴えたかったのは、「エコの環」を高齢者ビジネスにして社会貢献すること、ビタミン・ミネラル豊富な「エコの環」野菜を多く食べ、生活習慣病始めあらゆる病気の元である「現代型栄養失調」(ビタミン・ミネラル・食物繊維不足)からの脱却で、パンフレットを用意して料理を買ってくれた人たちに配布しました。
 ところで私たちはこれまで、イベントというものには一切関わりを持たずにやってきたことから、イベントに向けては不安だらけで準備を進め、当日を迎えました。1日目は前夜の雨がまだ少し残る不安定な天候で寒く、足元も悪くて客足はサッパリでした。しかし2日目は天気も回復し、新聞報道によれば700人が集まったとのことで、ときにてんてこ舞いするほど多くのお客さんが買いに来てくれました。隣で売っている「たい焼き」や「たこ焼き」、「だんご」に比べると私たちの料理は馴染みが全くなく、最初は皆さんすぐには買わず不審そうに立ち止まって思案しておられましたが、いざ買って食べてくれると、「野菜の甘味が煮汁によく出ていた」、「香ばしくておいしかった」と多くの方から好意的な声をかけて頂き、何より嬉しかったことは誰ひとり食べ残しをせず、返してくれたお椀が全てきれいに空になっていたことです。そしてリピートで買ってくれる人が結構いたことです。こうした料理により「エコの環」野菜の良さが少しでも理解され、地域の健康づくりに役立ってくれたらと願っています。



2014年11月13日木曜日

ミネラル不足

 先日、テレビの朝番組で、20代、30代女性の77%が「日常生活でイライラを感じている」と報道していました。その日の昼のニュースでは児童への虐待が年々急増しているとして、関係者のデモ行進とシンポジウムの開催を紹介した後で、50代女性が閑静な住宅街で、何者かにナイフで切りつけられたという事件を報道していました。こうしたテレビ・新聞の報道に接すると、いまの世の中、何か全体が無性にイラついているように感じられます。
 マクガバン・レポートが1977年に発刊され、「ビタミン、ミネラルの不足が目立つ」と警鐘を鳴らして以来、アメリカではこれら2種類の微量栄養素に注目が集まるようになりました。つまりそれまでのカロリー中心の栄養学が大きく見直されるようになったのです。右図はアメリカにある12ヶ所の少年院で、8,000人の少年を対象に食事内容を変えた時の、トラブル発生回数の変化を調べた結果です。炭酸飲料水を生のフルーツジュースに、砂糖や添加物の多いデザートやスナックを果物・生野菜・チーズ・ナッツに換えただけで、ケンカ、脅迫、看守への反抗、自殺などが47%も減ったといいます。そして食事の中の何が少年たちの行動や心理を変えたのかを詳細に調べた結果、5つのビタミンと4つのミネラルが凶暴性に関係していることが分かったといいます。
 
 ところでビタミン(有機化合物)が欠けても、ミネラルがある程度までビタミンの役割を代行できるそうですが、逆にミネラルが欠けるとビタミンは吸収されることも、その機能を果たすこともできないといいます。また、私たちの身体の中では、常に約3,500以上もの化学反応が酵素の助けを借りて行われていますが、この化学反応に関わる酵素はアミノ酸とミネラルから作られています。つまりミネラルは人体の健康に最も直接的に関与していて、「全ての病気を追求していくとミネラル欠乏にいきつく」(ノーベル賞受賞学者、ライナス・ポーリング博士)そうです。そしてアメリカ議会でミネラル欠乏を議題にしたときの議会記録には、「アメリカ国民の99%がミネラル欠乏に陥っている」と書かれているそうです。なぜ現代人はこれほどまでにミネラル不足に陥っているのでしょうか。
 ミネラルとは地球大地を構成する約100種類近い元素の総称です。私たち動物は植物が大地から吸収したミネラルを食べて身体を作っているのであり、結局は大地のミネラル構成に近い組成で形作られていると考えられます。しかし最近の農業は化学肥料(窒素・りん酸・カリ)は大地に大量投入しますが、他のミネラル類を全く投入しないため、だんだん農地がやせ細ってミネラル不足になっているのだそうです。したがってそこに育つ野菜・穀類もミネラル不足になり、それを食べる私たちもミネラル不足、ミネラル・バランスを欠いた状態になっているのだそうです。つまり私たちの健康を守るには、まず土作りが肝要であるといえます。私たちが作る「エコの環」野菜はスーパーで販売されている野菜に比べ、ミネラル分が多いという結果がありますが、私たちの畑には生ごみからのミネラル分が投入され、また、ゼオライトが保有するミネラルも付加され、当然かなと考えています。

森山晃嗣;アメリカはなぜ「ガン」が減少したか、現代書林(2010)

2014年10月30日木曜日

認定NPO法人に認定される

 いま全国には46,000を超えるNPO法人があるそうです。私たちの法人もそうですが、ほとんどのNPO法人は財政上の問題を抱えていて、なかなか思うように活動できない状況にあります。そこで寄付を集めやすくして健全な活動の発展を促すため、平成23年に法改正が行われ、「認定NPO法人」への認定要件が緩和されました。認定NPO法人になると、その法人への寄付には税制上の優遇措置が与えられ、寄付金の半分近くが寄付者の所得税、地方税から還付されるため、寄付者は寄付がしやすくなり、法人は寄付が集めやすくなるというわけです。法改正により認定の所管もそれまでの国税庁から各所轄庁(都道府県、政令市)に変更されました。
 これまで私たちは寄付金を集めるのに、主に公益財団法人京都地域創造基金を通して行ってきました。寄付に対し、認定NPO法人同等の税制上の優遇措置が受けられるからです。しかしそうすると寄付のお願いに行くとき、私たちの活動だけでなく創造基金の説明もする必要があり、非常に面倒な思いをしなければなりませんでした。それに寄付を集めるのに創造基金は何の手助けもしてくれず、集めた寄付金だけが一部ピンはねされます。しかもこの制度を利用するのに毎年、膨大な申請書と報告書を提出する必要があり、これなら自分自身が認定NPO法人になった方が得なのではと考えるようになった次第です。
 認定NPO法人になるには当然大きなハードルがあります。その第一は経理に関するもので、「公認会計士もしくは監査法人の監査を受けていること、または青色申告法人と同等の帳簿書類を備え付けてこれに取引を記録し、当該帳簿書類を保存していること」が求められます。もちろん私たちのような小さな法人に監査を受ける余裕はありません。しかし帳簿書類については平成24年のNPO法の法改正で、会計書類の「収支計算書」が「活動計算書」に移行した際、散々苦労して帳簿書類のパソコン処理化を進め、それが京都府の府民力推進課から青色申告法人の帳簿書類に相当することを認めてもらった経緯があり、これが大きな力になりました。次に問題になるのがパブリック・サポート・テストで、広く市民の支援を受けているかどうかを寄付金の額で判定するものです。①寄付金の収入に占める割合が1/5以上か、②3,000円以上の寄付を年平均して100人以上から受けているか、③条例指定によるもので、年に25人以上から15万円以上の寄付を受けているかなどですが、幸い①をクリアすることが分かりました。次に問題となるのは法人として遵守すべきもろもろの基準です。しかしこれらについては平成24年に、一般財団法人社会的認証開発推進機構のステップ3への第三者認証を取得した際、いろいろ書類の整備を実施しており、その経験が大きな力になりました。
 認定NPO法人の認定申請書は京都府に提出していました(9/19)が、その実地調査が本庁から2名、丹後広域振興局から1名来訪され、実施されました(10/8)。経理書類に問題はないか、会計資料と申請書に整合性が取れているか、組織運営は定款通り実施されているかなどが詳細にチェックされましたが、特に大きな指摘事項もなく、無事審査をパスしたとの連絡を受けました(10/24)。認定書の手交は本庁で行われることになっています(11/6)。ただ、認定NPO法人になったからといって急に寄付が集まるわけでなく、今まで以上に寄付集めには苦労することになりそうです。


書類審査の様子



2014年10月14日火曜日

ちーたび

 京都府には諸団体が取り組む地域の活性化事業に対し、「地域力再生プロジェクト支援制度」というのがあります。私たちNPOでも2007年度にその支援を受け、それまで個人宅向けに生ごみ処理の普及活動を行っていたのを、大型処理機を使った隣組の生ごみの大量処理に挑戦し、いまの「エコの環」事業への基礎を築きました。この制度には自立を目指す活動に対し、ソーシャル・ビジネスプログラムという支援プログラムもあり、私たちNPOもこの10月からその支援を受けるべく、まだ交付決定前ではありますが「事前着手届」を出し、活動に取り組み始めたところです。
 この支援プログラムには京都府のソーシャル・ビジネスセンターと私たちが協同で進める、「ちーたび」という地域力ビジネスがあります。私たちの活動を小さな「旅」にして参加者を案内し、内容を多くの人に知ってもらい、活動の応援隊やファンを作ろうとするものです。最初、ソーシャル・ビジネスセンターの方からその話しを持ちかけられたときは、何のことかよく理解できず、これまでイベント的なことには一切関わりを持たずやってきた私たちには、こんなことがビジネスになり、自立の助けになるのかといった疑いと戸惑いがありました。しかし私たちが進める「エコの環」も、野菜の販売額を順調に伸ばし、昨年度は51万円の売り上げがあったとはいえ、経済的自立には少なくとも130万円ほどの売り上げが必要であるのに対し、現在のボランティアに頼る生ごみ処理だけでは堆肥生産量に限度が有り、これ以上売り上げを大きく伸ばすのは難しく、また、売り上げを伸ばすにも販路の開拓が必要といった悩みを抱え、自立に向けた打開策を模索しているときでした。そこで思いついたのが「ちーたび」で、参加者に「エコの環」野菜を使ったおいしい手作り料理を食べてもらうという企画でした。そうすれば「ちーたび」開催に向け交付金で堆肥と野菜の増産が図れ、また、生ごみ堆肥で育てた野菜、料理の美味しさを分かってもらえば販路の開拓にもつながり、自立への道が開けると考えられます。そこで11月にまず第1回目の「ちーたび」を実施することにしました。そのために作成したチラシが上図で、タイトルは「美味しい野菜を食べて 美しい阿蘇海を!」です。
 「ちーたび」の実施日時は11月27日(木)の10時~14時で、KTR(北近畿タンゴ鉄道)の岩滝口駅前に集合後、近くの生ごみ処理場で反転可能な木箱使い、ゼオライトで発酵・堆肥化を進める独自の「宮津方式」を見学してもらいます。その後1~2km離れたところで3人の高齢者が生ごみ堆肥のみで野菜の栽培をしている畑を見学し、そのとき野菜の収穫も経験してもらいます。そして近くの阿蘇海海岸に移動し、私たちが将来、そこに堆積するへどろで人工ゼオライトを合成し、それによってその環境を修復しようと考えている海(500ヘクタール)を見学してもらいます。その後また岩滝口駅近くに移動し、「すゞ菜」という地産地消の店で「エコの環」野菜を使った美味しいランチを、女将の小西さんから料理法の説明を受けながら食べて頂きます。食後はすゞ菜で私たちの活動内容をスライドを使って説明し、参加者全員で環境や健康について話し合いたいと考えています。参加費用は1人2,000円で、定員は12名、小雨決行です。奮っての参加をお待ちしています。お問い合わせはTel$Fax ;0772-46-4943(松森)、あるいはメールで次までお願いします。toyomi55@beige.ocn.ne.jp
   bluesea.aso@gmail.com
すゞ菜のやさい畑のごちそうランチ

2014年10月5日日曜日

アミノ酸

 前回、調味料のアミノ酸について少し触れました。いま私たちが買う食品には生鮮食品以外、ほとんどのものに食品添加物が入っていて、なかでも「調味料(アミノ酸)」とか「調味料(アミノ酸等)」は非常によく見かける化学物質です。これらは食品が持つ本来の味を活かすというより、化学物質により濃厚な味付けをする為に入っています。その方が生産者にとって生産コストが格段に安く抑えられ、しかも消費者を中毒にしてその商品のリピーターを作ることができるからです。中学生の時、放課後に学級行事で残っていると、担任で理科の先生が数種類の化学薬品を持ってきて、目の前で黄色いオレンジジュースを作ってくれたことがあります。薬品だけでおいしいジュースが作れることにビックりしたことを覚えていますが、いま販売されている加工食品、行列のできるレストランなどのほとんどでは、こうした化学薬品調合による味付けが行われているわけです。
化学調味料のそもそもは、1907年に池田菊苗が昆布のうまみはグルタミン酸であることを発見したことに始まります。私たちの舌には味蕾という味覚器があり、甘味、酸味、塩味、苦味などの味を感じ分けることができますが、グルタミン酸の発見以来、それらに第五の味として「旨味」が加わりました。化学調味料の生産・販売を始めた味の素㈱も、当初は昆布を煮出して結晶化させ、それを販売していたようですが、しかしそれでは40キログラムの昆布からわずか30グラム程度の調味料しか得られないため、グルタミン酸ナトリウムを工業的に大量生産する方式に切り替えたようです。グルタミン酸は20種類ほどあるアミノ酸の一種で、タンパク質を加水分解すれば簡単に作れるからです。実際に高校の理科の授業でも、タンパク質である髪の毛からアミノ酸を作る実験が行われたりしますが、中国では髪の毛から作ったアミノ酸を原料に、醤油の製造販売も行なわれているようです。また、グルタミン酸ナトリウムを石油から合成することも可能であり、味の素㈱でも石油からの合成も行なっていたようです。しかし工業的に生産を行う場合は何を原料にするか、どういった工程で生産するかが大きな問題になります。どんな製品も生産過程で不純物の混入は避けられず、不純物の毒性などをよく調べる必要があるのですが、不純物が微量になればなるほどそうしたことへの注意が、無視されがちになるからです。髪の毛といえば気分的にもよくありませんが、それ以上に髪の毛には体内に入った有害物質(水銀など)が排泄物として含まれており、アミノ酸の入った安い食品には特に注意が必要です。調味料(アミノ酸)と記載されている場合は、グルタミン酸ナトリウムだけが添加され、調味料(アミノ酸等)と記載されている場合は、核酸とかコハク酸などアミノ酸以外の旨み成分がさらに配合され、カツオ味とかシジミ味、ウニ味などが思いのままに作られます。こうした濃厚な味のもとでは塩味を出すのに、塩分もかなり高め入っているといいます。私の舌はかなり鈍感ですが家内の舌は敏感で、アミノ酸が入っていると「ウッ」と吐き出したりします。味がしつこくて飲み込めず後に残るのだそうです。化学調味料の有害性についてはいろいろ取りざたされており、なんとかこうしたものに頼らない暮らしができないものかと考えますが、それには時代に逆行して「不便を楽しむ」ような風潮でも広まらないと、なかなか難しいのかも知れません。

2014年9月22日月曜日

ピンきら

 先日義兄が、「これは老舗のお茶でおいしいぞ」と抹茶入りお茶をくれました。何気なく裏の表示を見ると、調味料として「アミノ酸」、「砂糖」などが入っています。「おいしい」といってもそれはお茶本来の味によるものではなく、添加物のアミノ酸や砂糖でごまかされた味であって、何でこんなものを老舗が発売するのかと不思議に思いました。しかし考えてみれば1年程前、阪急阪神ホテルズを始めとするほとんどの老舗ホテルが、赤肉に牛脂を注入した加工肉を「霜降り肉」と称して料理に使用し、大きな食材偽装問題になりました。そのとき加工肉には「アミノ酸」もうま味成分として添加されており、老舗ホテルで食事を楽しむような食通の人も、添加された牛脂やアミノ酸の味を「おいしい、おいしい」と味わっていたわけです。行列のできるラーメン店とか中華料理店では、味付けに決まってアミノ酸などの化学調味料を入れるそうです。天然の昆布や魚を使って得られる「だし」の旨みはグルタミン酸によるものと云われますが、だしを取るには手間暇がかかるため、いまではグルタミン酸ナトリウムを主成分とする化学調味料が、料理を始めあらゆる加工食品に「調味料(アミノ酸など)」という表示のもとに添加されています。現代人はそうした味に慣らされ、アミノ酸や砂糖の入ったものでないと物足りなさを感じるのでしょう。しかし塩や砂糖でもそうですが、そのエキスを得るために周りの不純物をドンドン取り除き純度を上げていくと、得られるものは自然品から化学物質に変化し、身体にとって有害性を帯びてきます。しかもその多くは麻薬性を有し、依存症を引き起こします。南米ではコカの葉をお茶として飲んでいるそうですが、それを精製するとコカインという麻薬になるのと同じです。自然の旨みでは中毒になりませんが、グルタミン酸ナトリウムでは依存症を引き起こすのです。だから店に行列ができるようになるのですが、しかしそれは味覚障害によるものなのです。化学調味料は人によって動悸や吐き気、めまいを引き起こすことがあるので、特に子供には極力、摂らせないようにすることが大切だと云います。
 ”ピンと活き生き”宮津ライフでは高齢者ビジネスとして、宮津独自の料理の開発を進めていこうと考えています。そしていまある自然食料理屋の奥さんに頼んで、身体を温める料理として「ピンきら」(「きんぴら」ですが、ピンと活き生きのピンを取り込んで命名)の開発に取り組んでいます。私としてはできるだけお袋の味となるように、素材の味を生かしたシンプルな調理をお願いしているのですが、自然食料理屋でさえ万人向けを考えると、どうしても甘みを少し加えたがる傾向にあります。一度アミノ酸とか砂糖とかの味に慣れ親しむと、その味覚を変えるのはなかなか難しいようです。
試食用のピンきら
ピンきら試食会
 













南雲吉則;空腹が「生き方」を教えてくれる、サンマーク出版、2013

2014年9月11日木曜日

老人介護(つづき)

 前回は私の家内の母親で、103歳になるおばあさんの介護について少し触れました。おばあさんのことは家内と、「いずれ自分たちも同じことになるのだから」とよく話し合っています。そんなこともあってか家内も最近はほとんどイラつくこともなく、黙々とおばあさんの世話をしていて、傍から見ていても頭の下がる思いです。ただ、肝心のおばあさんが最近、「なかなかお迎えが来ない」とか、「施設に入った方が早く死ねるのでは」とか、巡回に来るお医者さんに「早く死ねるような薬をください」などとよく口にするようです。やはり一日テレビを見ているだけでは詰まらないのだろうと思います。私も何か暇を潰せる仕事がないかと、「野菜の種取りはできないか」、「新聞の切り抜きはできないか」、「ハガキの敷物が作れないか」などと家内に持ちかけるのですが、「目が見づらいから無理」とか「力が入らないから難しい」などとその都度却下される始末です。2~3年前に比べると視力、聴力、筋力などに相当衰えがきているようです。残念ながらいまできることといえば、テレビを見ること、食べること、寝ることだけで、そうなったとき人間は一体どうしたらよいのかと考え込んでしまいます。おばあさんは自尊心の強い人であるだけに、何もできないいまの状態に人一倍悔しい思いをされているであろうし、自尊心がズタズタになっているのではと思うからです。私の近所に、やはり母親の介護を6~7年やっておられるご夫婦がいます。そのお母さんの場合はずっとこん睡状態にあり、胃ろう(胃に開けた口)を通して栄養補給を行っておられます。ご夫婦ともに憔悴された顔を見ると、長年の介護でかなり疲れておられるように感じます。そのお母さんも昔は結構しっかりした方であっただけに、一体どんな気持ちで毎日毎日眠っておられるのだろう、良かれと思ってやっている処置が却ってお母さんの自尊心を傷つけ、「早く止めて楽にしてくれ」と思っておられるのではないかと、他人事ながらつい考えたりします。
 
長生きするには肉を食べるな? 食べろ?で述べましたが、日本人の平均寿命が顕著に伸び始めたのは、ほんの昭和(1926年)に入ってからのことです。それまでは腸チフスとか結核など細菌感染による死亡が多く、男女とも「45歳」がせいぜいの寿命であったのです。それがパスツールから始まる「病原菌退治」の近代医学の発達のお陰で、いまでは男女とも平均寿命が80歳を超えるまでになりました。他の先進諸国も状況は大体似たようなものだと云います。このことは私たちは50歳以上の生き方をあまりよく知らないとも云え、これからは「健康寿命」(日常生活が支障なく送れる寿命)をいかに平均寿命に近づけるか、つまり「ピンピンコロリ」が非常に重要な課題であると云えます。おばあさんにしても2~3年前までは、ハラハラすることはあってもガスを使って何とか自炊ができ、風呂にもトイレにも自分で入れたわけで、自尊心が傷つくことはなかったと思うからです。介護は単に家族に大きな負担をかけるだけでなく、本人にとっては尊厳を損なうことにもなるわけですから、健康寿命を意識して自重しながら余生を楽しみたいと考えています。