前回、体罰により起きた高校生の自殺の問題に触れ、我々が人間として生まれたことは奇跡に近く、だから生命の有り難さをもっと真剣に考えるべきことを書きました。その後ある本(永田和宏:タンパク質の一生、岩波新書)に書かれていたことを思い出し、今一度その本の内容から生命について考えてみたいと思います。
我々の身体は約60兆個もの細胞からできているそうです。想像もできない数ですが、60兆円を1万円札で積み上げると600キロメートル、富士山の160倍もの高さになるといいますからその数のすごさが分かります。各細胞には小さな核があり、その中に細いヒモ状の「DNA」が折りたたまれ、親から子への遺伝情報を保持し、自己複製の役割りを担っています。このDNAをつなぎ合わせてまっすぐ伸ばすと約1.8mになり、身体全体ではその長さは1,000億キロメートル、なんと地球と太陽を300往復するほどの長さになると云うからビックリです。親から授かった生命を守っていくのにそれほどの情報量が必要とされるのです。そしてわずか10~20ミクロン(1ミリの100分の1~2)ほどの各細胞の中には、数万種類ものタンパク質が個数にして80億個ほど詰まっていて、細胞が生きていくための生命維持活動を行っていると云うから、もう驚きを越して奇跡が起きているとしか云いようがありません。身長2mにも満たない我々は巨大な宇宙空間を抱えて生きているのです。こんなことを知ったら安易に死んだり、あるいはいじめ・体罰を加えるなど、とんでもないことだということになります。
詳細は忘れましたが、細胞の中のタンパク質の働きがまたスゴイのです。小さいころラジオから人の声や音楽が聞こえるのが不思議で、「コビトがいるの?」と親に聞いたことがありますが、まさにコビトさながらの働きをタンパク質が行っているのです。まず骨格原料となって細胞などを形作り、次に酵素となって細胞内の代謝(分解・合成)反応をつかさどり、物質やエネルギーを作り出します。細胞内の物質の移送には物質に移送先の荷札をつけ、レール上をモーターを使って運ぶそうですが、荷札・レール・モーターは全てタンパク質から作られます。また、さまざまな情報伝達もタンパク質が担っています。こうしたタンパク質にも寿命があり(数秒~数か月)、寿命が来れば分解され新しいものが作られます。そのときの再生装置もタンパク質から作られ、DNA(タンパク質)の鋳型を使って複製されます。このとき不良品が発生すると品質管理のメカニズム(タンパク質が関与)が働き、廃棄処分されるというから思わず笑ってしまいます。1個の細胞は目に見えないほど小さいのですが、その中には一つのタンパク質社会が存在し、精巧かつ見事に機能して我々の生命を維持管理していてくれるのです。改めて生命の重みを思い知らされると同時に、動・植物を含めみだりに生命を粗末にしてはならないことを教えてくれます。
2013年1月30日水曜日
2013年1月17日木曜日
奇跡
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生命のかけら |
大津の事件の後新聞では、「いじめはよくない」と10数名の著名人による訴えが連日行なわれ、今回も「体罰はよくない」との訴えが行われています。しかしどれも何かが欠けているように思われて仕方がありません。私にはこうした問題が起きるといつも心に浮かぶ絵があります。数十年も前、小学生の子供に買い与えた手塚治虫の「ブッダ」という本の中の数コマの絵です。それはこの地上のありとあらゆる生命は、死ぬとかけらとなって宇宙という大きな球体に吸い寄せられ、渾然一体となった後そこから再び無数の生命のかけらが生まれ、それが世界のありとあらゆるものに新たな生命を吹き込むという絵です。つまり我々の生命はゾウ、ネズミ、虫けら、雑草、あらゆるものの生命と根源は同じであり、生まれ変わるときはどんな生き物になるか分らず、だから「人間に生まれたことは奇跡に近く、とても有り難いことなのだ」ということを教えているように思います。本には「人間も自然の中ではあらゆるものとつながりを持ち、意味があって生きており、もしお前がいなかったら何かが狂うだろう。お前は大事な役目をしているのだから」といったセリフもあり、この本を読むと我々の生命がいかに大切なものであるかを教えられる気がします。そして生命が失われるとなぜ人は悲しみ、いかに悪人であっても鞭打つことをしないかが分かる気がします。いじめや体罰がなぜダメなのか、それを避けるにはどうしたらよいかという話しの前に、我々に与えられた生命がいかに尊いものであるか、だから決して粗末に扱ってはならないことを大人自体がもっと考え、若い人に教える必要があるのではないでしょうか。
2013年1月7日月曜日
苦手は伸びしろ
珍しく快晴に恵まれた宮津の元日 |
さて新春の新聞で名門インテルに移籍した長友選手が、「僕は自分の苦手なところを自分の伸びしろだと思うことにしており、苦手だった走りを武器に変えた」と語っていました。やはり一流と云われる人は考えることが違うと感心させられましたが、長友選手のお母さんがまたスゴイ人で、「親が先回りしないよう心掛けている」ということで、長友選手が中学時代に悪い場所に出入りしても、大事な試合に負け落ち込んでいても、イタリアでけがをしても親からは一切連絡をせず、その代り本人から求めがあったときは何があっても話しを聞いてやり、親としての言葉をかけてきたと云います。そして親の役目は子供の不満、否定的考えをプラス思考で受け止めてやり、親の考えに従うのでなく、自分で考え自立する子供に仕向けてやることだと云っておられます。どちらの考え方もいまの日本が大いに学ぶべき示唆に富んだ言葉のように感じました。
バブル崩壊後20年あまり、日本は成長なき経済に陥っています。この間、経済学者も政治家も産業構造の変革を考えるより、景気浮揚策として従来の成長モデル(日本の得意分野)の振興策ばかりに目を向け、挙句にインフレを創出しようとしています。しかし後進国の成長により地球資源の枯渇は目に見えてきており、大間のマグロに初セリで1億5540万円もの最高値が付いたと云いますが、これも最近マグロを食べるようになった中国人との熱き戦いの結果であり、このままではあらゆる分野で資源の奪い合いが始まりかねません。そろそろ「脱成長」による豊かさを求めるべき時が来ており、20年間苦しんできた日本の中にこそ、脱成長、脱資源のための「眠れる宝」が一杯あるように思います。日本は世界に先駆け、そうした萌芽の発掘にこそ目を光らせるべきではないでしょうか。グローバリゼーションが進む中、ローカリゼーションに目を向けることも大切です。「青い鳥」は意外と近くにいるからです。その意味からも「エコの環」をしっかり育てていきたいと考えています。
2012年12月25日火曜日
少エネ

いま日本でエネルギー問題を語るとき、誰もが現状の生活を黙認したまま原発を止めるのは難しいとか、京都議定書を守るのは難しいとか議論しています。しかしいま地球上には70億の人々が住んでおり、これらの人々が先進国、特にアメリカ人と同じ生活スタイルをとると、地球5個分の資源が必要になると云います。実際、中国、インドなど人口大国が経済成長することで、資源の枯渇が現実味を増してきています。尖閣諸島に中国が異常なまでに固執するのも当然の話しです。そんな中で先進国日本が率先してなすべきことは、「省エネ」ではなく「少エネ」ではないでしょうか。早い話し、夜の暗闇を取り戻すことも一つの方法です。地球上のほとんどの国ではそれが当たり前であり、それだけでエネルギー問題のかなりは解決し、家族の絆、人の温もりも取り戻せるのではないでしょうか。
2012年12月19日水曜日
自民 圧勝?
今回の衆議院選ほど混迷する選挙はなかったのではないでしょうか。日本の命運がかかる多くの難題に、12もの政党が乱立してテンデンバラバラの政策を主張し、訳のわからぬ混戦の中で自民党が勝ち残った、そんな消去法による圧勝だったような気がします。
自民党は長期政権を担った党であり安心感はあります。しかし安部総裁がデフレ脱却のため、日銀に輪転機でお札をドンドン刷らせるとか、大型公共事業を復活させるとか云っておられるのを聞くと、大丈夫かなと心配になります。お札を刷ってインフレに導くというのは、理屈として通るかも知れません。しかし経済は生き物であり、物価だけが上昇し所得が伴わなかったらどうなるのでしょう。また、公共事業を積極的に進めるという裏には、消費税増税前に景気を良くしておきたい狙いもあるのでしょうが、借金をして公共投資を行う場合、税収弾性値という数値(公共投資によるGDP伸び率に対する税収伸び率の比)が12以上ないと元が取れないと云います。インフラが不十分であった高度成長期に比べ、いまはこれがせいぜい1~2と云われる中、財政赤字を増やすだけになりかねません。我々が風邪をひくと高熱が出ます。これは身体が細菌やウイルスへの免疫力を高めるための発熱なので、解熱剤などで熱を下げるのは間違っていると云います。いま我々が経験するデフレスパイラルも、実はいまの経済構造の歪みに対し免疫力が働いているのかも知れません。そして全国のアチコチに新たな経済的仕組み、アイディアが生まれようとしているのかも知れません。そうした自然治癒的発想こそがデフレ脱却の救済策であり、それを新たな経済的基盤に育てていくのが政治の役割りではないかと思います。ただ、小泉進次郎議員は「財政赤字、原発、社会保障等の問題は自民党の責任である」とはっきり云っておられ、彼ら若手に大いに期待したいところです。
それにしても今の日本の財政状況は深刻であり、先日のテレビでは大学生達が年金制度に不満と不安を述べ、遠慮がちに「高齢者にもそれなりの負担をしてほしい」と云っていました。1960年当時11人ほどの現役世代で1人の高齢者を支えていたのが、いまは2.4人が1人を支えていると云います。完全失業率も40~60代は4%台であるのに対し、30代は6%、20代は8%と若者ほど厳しい状況にあると云います。彼らが将来に不安を抱くのも当然であり、逆に若者の雇用を皆で支える仕組みが作れないものかと思ったりします。我々が進める「エコの環」では元気な高齢者による運営を考えていますが、そうした中に若者を加えれば、高齢者による若者を支える仕組みが作れるかも知れません。
自民党は長期政権を担った党であり安心感はあります。しかし安部総裁がデフレ脱却のため、日銀に輪転機でお札をドンドン刷らせるとか、大型公共事業を復活させるとか云っておられるのを聞くと、大丈夫かなと心配になります。お札を刷ってインフレに導くというのは、理屈として通るかも知れません。しかし経済は生き物であり、物価だけが上昇し所得が伴わなかったらどうなるのでしょう。また、公共事業を積極的に進めるという裏には、消費税増税前に景気を良くしておきたい狙いもあるのでしょうが、借金をして公共投資を行う場合、税収弾性値という数値(公共投資によるGDP伸び率に対する税収伸び率の比)が12以上ないと元が取れないと云います。インフラが不十分であった高度成長期に比べ、いまはこれがせいぜい1~2と云われる中、財政赤字を増やすだけになりかねません。我々が風邪をひくと高熱が出ます。これは身体が細菌やウイルスへの免疫力を高めるための発熱なので、解熱剤などで熱を下げるのは間違っていると云います。いま我々が経験するデフレスパイラルも、実はいまの経済構造の歪みに対し免疫力が働いているのかも知れません。そして全国のアチコチに新たな経済的仕組み、アイディアが生まれようとしているのかも知れません。そうした自然治癒的発想こそがデフレ脱却の救済策であり、それを新たな経済的基盤に育てていくのが政治の役割りではないかと思います。ただ、小泉進次郎議員は「財政赤字、原発、社会保障等の問題は自民党の責任である」とはっきり云っておられ、彼ら若手に大いに期待したいところです。
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年金・医療・介護の費用推計 |
2012年12月12日水曜日
ノーベル賞

自然界を眺め感心させられるのは、すべてが循環して元の状態に戻り、ゴミが発生しないことです。そして太陽以外のエネルギーを必要としないことです。残念ながら人間が作る人工物は生産時に太陽以外のエネルギーを大量に使用し、しかもそのままでは元の原料に循環されず、古くなればゴミになります。自然にならって循環させようとリサイクルしても、それに多くのエネルギーを必要とするばかりか元の状態には戻せず、劣化物に戻すのが精一杯です。人間が自然界から学びなすべきことは、自然の力、恵みをできるだけ天然自然のまま利用することで、自然界に存在しない形にまで変形加工して利用すること(不自然/非自然)は、恐れ多いことであることを知るべきでしょう。
惣菜店がコロッケを作って販売しようとする場合、自然にあるものを使ってまともに作れば、どう頑張っても1個130円になるそうです。しかしこれが食品添加物のプロにかかると1個20円で作れるそうです。粗悪な材料に結着材、乳化剤、肉エキス、うま味調味料など、自然界にない20種類以上の添加物を使えば、子供の喜ぶコロッケが作れると云います。人間の技術はここまで来ているのです。しかしこんなものを食べ続けたら一体どうなるのでしょうか。昔は四百四病と云われた病気が、いまは数万種もの原因不明の難病、奇病があると云われ、それは単に医療診断の進歩だけでは説明できないように思われます。流産率、死産率、催奇形率も著しく増大していると云います。こうした問題(根本原因はハッキリしませんが)を放置したまま、医療技術だけ進歩しても本末転倒のような気がします。いずれにしても食べ物が我々の身体の血となり肉となることだけはハッキリしており、食べ物は我々が生きていくうえで一番根源的、厳粛なものであるハズです。単に「うまければよい」、「安ければよい」といった次元のものではなく、もっと真面目に考えるべき問題です。「エコの環」を通して食の問題を真剣に考えていきたいと思っています。
2012年12月3日月曜日
未来へ一票
嘉田由紀子滋賀県知事らが結成した「日本未来の党」が、各地の選挙管理委員会に思わぬ混乱を与えているそうです。政党名をイメージさせないよう啓発用語から「国民」とか「生活」といった言葉を外し、衆議院選挙の啓発ポスターや投票用紙を作ったはよいが、啓発用語に多くの選管が「未来」を選んでいたためだとか。倉敷市では「未来へ一票」と印刷された投票所の入場券22万枚を、90万円余をかけ刷り直すというから大変です。国家レベルになるとわずかな狂いが大きな波紋となることがよく分かります。
ところで「太陽の党」と合併後「日本維新の会」の原発への対応に後退が見られ、日本の原発をどうするのか国民的選択肢が減るなか、「日本未来の党」が原発問題を最大争点に掲げ、登場したことは大変よかったと個人的には思います。地球環境、人類の存亡を考えるとき、いまやこれ以上人間が作り出した危険な化学物質を、垂れ流したり放置したりすることは許されず、議論を深めるべきだと考えるからです。
日本では農薬のDDTは1971年に使用が禁止されました。しかし胎児のへその緒からはそのDDTが検出されるそうです。畑の土にまだ残留していることが考えられ、また、太平洋の表層水にDDTは0.00014μg/kgほどしか含まれませんが、太平洋の動物プランクトンには1.7μg/kg(1万倍)、イワシには43μg/kg(30万倍)、スジイルカには5,200μg/kg(370万倍)が含まれると云われ、食物連鎖によるDDTの生物濃縮が、回りまわって胎児を汚染していることも考えられます。今回の原発事故では大量の放射能汚染水が海に流れ、森林には膨大な量の灰が残っています。今後こうした物質が食物連鎖によってどのような影響を及ぼしてくるかは見当もつきません。かといって「日本未来の党」が云うように10年で原発をなくすと云っても、しっかりしたロードマップを持ち、よほど強い決意でそれを貫く覚悟がない限り、単なる情緒論に終わり国家滅亡の危機だけが残る結果になりかねません。国家レベルになると波及する影響も計り知れなく大きくなるからです。日本国民として節電・停電覚悟の大きな決意・決断が必要です。
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食物連鎖 |
日本では農薬のDDTは1971年に使用が禁止されました。しかし胎児のへその緒からはそのDDTが検出されるそうです。畑の土にまだ残留していることが考えられ、また、太平洋の表層水にDDTは0.00014μg/kgほどしか含まれませんが、太平洋の動物プランクトンには1.7μg/kg(1万倍)、イワシには43μg/kg(30万倍)、スジイルカには5,200μg/kg(370万倍)が含まれると云われ、食物連鎖によるDDTの生物濃縮が、回りまわって胎児を汚染していることも考えられます。今回の原発事故では大量の放射能汚染水が海に流れ、森林には膨大な量の灰が残っています。今後こうした物質が食物連鎖によってどのような影響を及ぼしてくるかは見当もつきません。かといって「日本未来の党」が云うように10年で原発をなくすと云っても、しっかりしたロードマップを持ち、よほど強い決意でそれを貫く覚悟がない限り、単なる情緒論に終わり国家滅亡の危機だけが残る結果になりかねません。国家レベルになると波及する影響も計り知れなく大きくなるからです。日本国民として節電・停電覚悟の大きな決意・決断が必要です。
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