2015年10月28日水曜日

アースガーデンみやづ2015

 京都府立の「海と星の見える丘公園」でアースガーデンみやづ2015が開かれました(10/24、25)。初日は汗ばむほどの陽気であったのが、翌日は一転、風がかなり吹き荒れ、気温も日なたボッコしたいほどの天候になりました。そんななか私たちは「エコの環」活動についての展示を行いました。ゲストに金子勝氏、藻谷浩介氏、金丸弘美氏などそうそうたる先生方をお招きしてのイベントでしたが、人出は非常に少なく、まして食品売り場の奥に設置された私たちの展示コーナーには、足を運んでくれる人はきわめて少なく、そんなことから多くの展示ブースでは説明者が席を離れて無人となり、ますます殺風景なコーナーになってしまいました。しかし私たちはせっかく足を運んでくれた人には説明をしたいし、「エコの環」野菜の販売も行っていたので、家内と私のどちらかは展示ブースに立ち、2日間でなんとか70~80人の人たちに説明をし、パンフレットを手渡しました。
食品売り場

 来てくれた人にはまずゼオライトを知っているか尋ねました。ほとんどは知らないというので、土壌微生物が棲みやすい粘土で生ごみを発酵分解させやすいことを、模型の処理箱を使って説明しました。そこまでは少し引き気味に話を聞いていた人も、次に処理箱を反転させて撹拌するところを見せると、それが面白いのかほとんどの人はそこで近寄ってきて箱を覗き込み、話を聞いてくれました。そして発酵肥料の現物を見せると、きれいに分解された肥料にみなビックリし、それを使って高齢者が安心・安全で栄養豊富な野菜を作り、地域で販売して利益を皆で分配していることを説明すると、大きく頷きながら「エコの環」を理解してくれました。次に阿蘇海を知っているか聞くと、7~8割は宮津市以外からの人たちで、多くが京都市や大阪などから来ておられたことから、ほとんどが熊本の阿蘇を連想されました。そこで阿蘇海は天橋立の内海であること、大量のへどろが堆積して泳げない、魚の取れない海になっていることを、「へどろのサンプル」を見せながら説明すると、みなさん一様に驚かれ、次にこのへどろからゼオライトとシリカゲルが合成でき、将来はへどろから作ったゼオライトで「エコの環」を回し、阿蘇海の浄化に役立てたいと話すと、非常に驚いて帰って行かれました。
私たちの展示ブース

 来場者が少なく拍子抜けのイベントで、却ってぐったり疲れてしまいましたが、しかし勇気づけてくれる人たちもいました。ある若いカップルは通り過ぎようとしていたのを呼び止めて説明したのですが、私の話にいちいち「ワー」とか「キャー」とか歓声を上げ、最後に「へどろってすごい資源じゃないですか。写真撮っていいですか」といって、展示物を何枚か写真に収めてくれました。また、大阪から来たという男性も私の説明に大きく頷き、バチバチ写真を撮りながら熱心に話を聞いてくれました。
 外人の男性もやってきました。日本語が分かるか聞くと「English only」というので、英語で説明することになりましたが、途中、「土壌微生物」、「発酵」、「へどろ」といった英単語が分からず、むちゃくちゃの英語で説明しましたが、「コンポスト(堆肥)! I got it(分かった)」と笑いながら帰って行きました。スペイン人の女性もやってきました。こちらは通訳がいたので日本語で説明しましたが、しかし通訳も前述の単語などは説明しづらいようなので、こちらも英語と日本語をごちゃ混ぜにして説明しましたが、なんとか理解してくれたようで、大きく頷きニッコリ笑って帰っていきました。



2015年10月18日日曜日

干し柿づくり

 毎年いま頃になると、家内たちは「干し柿」づくりにチャレンジします。「エコの環」野菜と一緒に持っていくと、結構喜んで買ってもらえるからです。しかし天候によるのかカビを生えさせることがよくあり、なかなか干し柿づくりといっても難しいようです。あるとき近所で干し柿をよく作っている人にカビの防ぎ方を聞いたところ、イオウを燃やしていぶすということでした。いってみれば殺菌・抗菌の力でカビを防ぐわけです。家内たちにそんな真似はとてもできず、これまでカビが生えれば捨てていたようですが、市販のものにはそうした処理をしたものが多いのだろうかと思うと、なにかゾッとします。今年の干し柿はいまのところ順調に出来上がっているようで、なんとかこのまま行ってくれることを願っています。
 家内と一緒に干し柿づくりをしている奥さんから、「柿の木の高いところに残ったカキを取ってもらえないだろうか」と頼まれ、先日カキ取りに初挑戦しました。カキ取りのために竹の先を斜めにカットし、その真ん中に割れ目を入れて二股をつくることを教えられ、まず右上図のようなカキ採取装置を作りました。この二股でカキがぶら下がる小枝を挟んでひねると、カキの枝は脆いので簡単に折れ、折れた枝を二股に挟んだまま下におろすとカキが収穫できるのです。木に梯子をかけて少し高いところに登り、そこからカキのぶら下がる小枝をねらって二股で挟むのですが、挟み方が浅いと折角取ったカキの枝が外れやすく、下で待ち受ける奥さんに渡す前に落下させてしまい、かなりのカキを無駄にしました。しかし慣れると面白いように取れるようになり、つい夢中になって買い物かごイッパイになるまで取り、あとでそれを運び下すのが大仕事でした。
翌日、奥さんから皮をむいた大量のカキを渡され、家内と大急ぎでカキを2つづつ紐で結び、とりあえず脚立に竹の棒を固定してそこに干すことにしました。しかし最近は近くにクマが出たとの放送があったり、庭がときどき何物かに穴を掘って荒らされたりすることから、低い位置では食べられてしまうということになり、軒下に棒を渡してそこに移すことにしました。家内はいろいろ別の用で忙しいため、棒の固定からそこへのカキの移動は全部一人でやりましたが、まさか自分が干し柿づくりをすることになるとは思ってもいませんでした。しかしつるされたカキと窓・壁にできるその影は、なんとも言えない懐かしさを呼び起こし、あったかい気持ちにさせられました。

2015年10月10日土曜日

さつまいもの試し掘り

 この春(5/30)、ちーたびでさつまいもの苗を植えました。その時はへなへなであった苗が、いまでは葉っぱが畝間までゴワゴワと埋め尽くすまでに成長し、今月の末にそのいも掘り体験のちーたびを計画しています。しかし果たしてうまく育っているかが心配であり、また当日に掘ったいもはすぐに食べてもらえないことから、事前に少し収穫しておこうと数日前、家内と試し掘りを行いました。家内は一度さつまいもを育て、見事にモグラに食べられた経験を持ちますが、私は全くの初体験で、家内の所作をまねながら引き抜きにかかりました。しかし簡単にスポと抜けることがある反面、多くは茎だけが取れていもが土中に残ってしまうので、土を手で取り除いていもを探し当て、あとは周りの土を丁寧に除去して掘り出しました。というのは雑に扱うとキズがつきやすく、また途中で折れたりしたからです。さつまいもは思った以上にうまく育っていて、それがとても嬉しく、感謝しながら5~6mを掘りました。ただ、いもをチョット掘ると葉っぱが抱えきれないほどの量になり、しかも茎が非常に複雑に絡まって隣の畝まで伸びたりしているため、いもを掘るより茎や葉っぱを取り除く作業が大変でした。そんな中でも家内は「食べられる」といって「芋づる」もせっせと採っていて、「さすがに女だ」と感心させられました。
 掘ったいもをプラスティックのケースに並べていると、通りがかりの人が「上手に育っているやないですか」と次々に立ち止り、中には「いものヒゲは取ったほうがよい」と親切にヒゲ取りを手伝ってくれ、「天日で2~3日干しなさいよ」といってくれる人がいるかと思うと、「陰干ししなさい」と忠告してくれる人もいたりして、どちらなんだと思うこともありましたが、皆さんのおおよその意見はさつまいもは10月中ごろまでに掘った方が良い(10月末は少し遅すぎるようです)、長期保存する場合は干した後、一つ一つ新聞紙にくるんで段ボール箱に入れ、暖かいところに置いて保存しろというものでした。どうもさつまいもは暖かい所の産物なので寒いのが苦手なようです。またある人はいもを掘る前に畝の両サイドにスコップを立て、中央を持ち上げるように土を起こしておくと、茎を引っ張るだけで簡単に抜けると教えてくれましたが、どうせなら掘る前に教えてくれと思ったことでした。いろいろ皆さんと話していると、生ごみ堆肥で育てている私たちのさつまいもを、結構気にかけておられたようです。
 ちーたびは10月31日(土)、9:30~14:00に参加費;1,500円(京都ちーびず応援券使用可)、募集定員;8名、集合場所;岩滝口駅前で実施します。いも掘りを体験した後、地産地消の店”すゞ菜”の女将と一緒に、さつまいも料理、さつまいものお菓子などを作って、おいしくいただく予定です。ふるってご参加ください。

2015年10月3日土曜日

うれしい話

 先日、「ピンと活き生き宮津ライフ」の申込用紙を配布するため、あるお宅を訪問したとき、奥さんからうれしい話を聞きました。そこのご主人は私たちの生ごみたい肥(宮津方式)に関心を持たれ、5年ほど前からゼオライトを使ったたい肥作りを行い、野菜を作っておられるのですが、その野菜を食べるようになってから、奥さんの身体の調子が非常によくなったというのです。奥さんはかつてかなり太っておられ、血圧、血糖値、コレステロール値に問題を抱え、また、「橋本病」という甲状腺の病気にもなっていて、神戸の病院まで通っておられたそうです。しかしいまでは血糖値、悪玉コレステロールのLDL値・総コレステロール値が正常に戻り、体重も減り、甲状腺の病気も病院の先生から「数値が非常によくなっていますね」と言われたというのです。血圧はまだ薬を飲んでおられるそうですが、飲む量が減ったといいます。奥さんに言わせると「エコの環」野菜のほかにいま一つ思い当たるのが、ご主人が作ったニンニクで黒ニンニクというものを作り、食べていることだそうです。ご主人とはどちらの効果だろうと話しておられるそうですが、ただ奥さんはご主人の作る「エコの環」野菜は非常に甘く、普通の野菜とは何か違うと感じておられるそうです。そして最後に「とても良いたい肥作りを教えていただき、大変感謝しています」と言っていただきました。

 以前、ブログ紫外線の害でも触れましたが、私自身も「エコの環」野菜を食べるようになってから、身体によい意味での変化を感じており、前述の奥さんの話はうれしいだけでなく、非常に納得できる話のように感じました。あらゆる病気はミネラル不足に起因すると言われます。しかし最近の野菜はミネラル不足のものが多いだけでなく、私たちは料理を作るとき、食材の肝心の栄養素を切ったり削ったりして捨ててしまい、捨てられる生ごみの方に実は栄養分は詰まっているのです。だからそれを肥料にした「エコの環」野菜にミネラル分が豊富なのは理屈であり、「エコの環」野菜を食べることで、身体の調子が良くなるというのも理屈だと感じるからです。また、「エコの環」野菜は露地栽培しています。そうした野菜はハウスものに比較して厳しい環境を生き抜いてきており、フィトケミカルの多いことが考えられます。フィトケミカルには抗酸化作用があり、身体のサビ防止(老化防止)に効果のあることが知られ、ガン対策にもなるといわれます。また、野菜に多い食物繊維は、免疫機能を司る腸の環境を整えたり腸の栄養分となり、健康回復に有効なことが考えられます。今後も先ほどの奥さんのような話を聞き集め、できるだけ多くの人に「エコの環」野菜の良さを伝えていきたいと考えています。

2015年9月23日水曜日

シミュレーション

 阿蘇海のへどろにすばらしい吸湿/放湿特性があり、蒸気吸着式ヒートポンプ(水蒸気を利用する熱の汲出しポンプ)を作ることが可能なことは、これまでにもなんどか触れてきました。水を高温な場所に置くと蒸発して、1グラム当たり600カロリーという大きな熱を奪います。火に水をかけると鎮火するのは水がこの大きな熱を奪うからです。この水蒸気をへどろに吸着させ、その大きな熱を冷却水で回収することで、例えば太陽光にさらされ高温となった屋根の熱をお湯として回収し、同時に室内温度を下げようとするのが「へどろヒートポンプ」の考え方です。これまでに基礎的な実験はほぼ終了し、実用化の実験を進める段階にあるのですが費用がかさむため、なかなか実験に移れず悶々としていました。そんなとき府立海洋高校の生徒さんたちに講義をする機会があり、その折、学習の教材用にと思い切って装置を学校に預けることにしました。そして先生に使い方を理解していただくため、2度ほど実験を計画したのですが、1回目は装置に破損が見つかり、2回目は急に激しい雨に見舞われ実験ができず、やっと先日、3度目の正直で実験を行うことができました。しかしその日はあいにくの曇天で条件的には最悪でしたが、目的は実験方法を伝えることだったので、まずは実験をすることで何とか実験の要領を理解してもらうことができました。
 ところでパソコンのソフトにエクセルという計算用ソフトがあります。データをインプットするといろんな計算が簡単にでき、またそれをグラフにしたりできます。このエクセルには計算式(関数)などもインプットでき、複雑な計算式でも簡単に計算してグラフ化できます。右下の図は3次式をグラフにしたものです。
いまへどろヒートポンプの原理を考えたとき、その仕組みは極めて単純です。つまり水を入れた容器とへどろを入れた容器をパイプでつないだだけの構造で、装置内で起きる現象も蒸発、吸着、伝熱など限られています。そこでそれら反応式をエクセルにインプットして組み合わせることで、へどろヒートポンプで起きる現象を数値計算できないかチャレンジしてみました。各反応式には適当な係数をかけ、計算結果を微調整しながら実験結果に近づけていくのです。これをシミュレーション(数値模擬実験)といって、規模は違いますが地球温暖化などの予測にもこうした手法が取られます。下図は海洋高校で行った実験のシミュレーションの結果で、計算結果と実験結果は非常に良い一致を示しています。こうしたことをいろんな実験に対して行っていくと、装置はどのような形状がよいかとか、水の量、へどろの量はどれほどがよいかなどが予測できるようになり、海洋高校の生徒さんたちのよい教材になるのではと期待しています。

2015年9月10日木曜日

ぽっくりさん

 私の両親は老後によく夫婦そろって、1~2泊程度の旅行に出かけていました。そしてたまに親元(岐阜)に帰ると、「”ぽっくりさん”に行ってきた」といった話をよくしていました。当時は「ぽっくりさん」と聞いても「なに、ソレ?」くらいの感覚で、いい加減に話を聞いていたのですが、いま私たちが「”ピント活き生き”宮津ライフ」で主要テーマに取り上げている「ピンピンコロリ」、つまり人生の終末において介護のお世話にならないための願掛けに、どこにそのお寺があったか知りませんが、両親はよく出かけていたようです。その所為かどうかは分かりませんが、いまから30年近く前、両親は見事なくらいあっさりとこの世を去りました。
 親父はいつも朝と夕の2回、食事前に読経をするのが習慣でした。その独特の節回しは私の子供たちがよく真似をして、笑ったりしたものです。当日親父は前の家の主人と立ち話をしていて、兄貴が「そろそろ夕飯だよ」と呼びに行くと、いつものように読経に2階へ上がったそうです。しかし夕飯の時間になってもなかなか降りてこないので、2階へ見に行くと仏壇の前で数珠をしたまま倒れていたそうです。82歳でした。一方のお袋もそのころはまだ元気で、四十九日の法要のとき、我が家まで車で連れて帰りました。一週間ほど我が家に滞在した後、西宮の兄貴の家まで一人で鉄道を使って行き、数日滞在した後やはり一人で岐阜まで帰っています。そのお袋が親父が亡くなったわずか4カ月ほどあとに体調を崩し、2カ月もたたないうちに「老衰」で亡くなりました。80歳でした。介護といっても介添え程度でほとんど兄貴夫婦に迷惑をかけることなく、最後は義姉の手を取り、「ありがとう、ありがとう」といって亡くなったそうです。
私たち夫婦も共に高齢者といわれる年代になり、最近は自分たちの行く末についてよく話したりします。そしてまさに「ぽっくりさん」だった私の両親は、いったい何が良かったのだろうと考えたりします。ただ思い浮かぶのは二人とも非常に健脚で、常に身体を動かし働いていたということです。以前、「百歳バンザイ」というNHK番組があり、多くの元気な百寿者を紹介していました。あるおばあさんはお嫁さんに代わって小さい子供の面倒を見ていて、子供が道路に出ようとするとそれを走って追って止めようとしたり、子供をおんぶひもで背負ったりしていました。あるおじいさんは電気の保全業務で電柱に登ったりしていました。百歳でもこんなに元気に生きられるのかと感心したことを覚えています。自然界の動物は敵から逃れるため、常に身軽な体型を保っているそうです。人間も動物、いつまでも自分の足で移動し、自分の身は自分で守ったり、身体を使って働くことは生きるための基本なのでしょう。それと「絶対に介護で人の世話にならない」という強い意志、願望も、現実には明日倒れるかも知れませんが、何も考えずに生きることに比べれば、終末人生にかなり大きな差を与えるように思うのですが、どうでしょうか? 

2015年8月30日日曜日

世界陸上競技大会

 いまから10年近く前、大阪で世界陸上競技大会がありました。陸上競技にあまり関心は無かったのですが、招待券を頂いたこともあり、家内と長居スタジアムまで出かけたことがあります。しかし思ったよりトラックまでの距離が遠く、走る選手が遠くに感じられ、フィールド競技の砲丸投げや棒高跳びになると、双眼鏡でもないと選手の顔もよく分からず、遠くの方で何かやっているといった感じで迫力が全くなく、いささかガッカリして帰ってきたことを覚えています。ただ、競技を終えた選手達が観戦のため間近の空席に座りに来るため、有名な選手をすぐ隣で見ることができたのはよかったですが。
 ところで先日、何気なくテレビをつけると北京の世界陸上競技大会をやっていました。丁度砲丸投げをやっていましたが、あまりなじみのない競技も選手の真剣な顔がアップされ、投てき距離、順位などがすぐに分かると結構面白く、つい引き込まれて見ていましたが、そのうちに他の競技、とくにトラックの7~8名による真剣勝負が始まると、もうとにかく面白く、毎晩のようにテレビで観戦するようになりました。特に「陸上の華」といわれる100m、200m走には日本選手が男女4人も出場し、ワクワクした思いにさせられました。
 それにしてもボルトを始めとする短距離選手のあの筋肉、スゴイですね。画面にアップされるその筋肉姿は男女ともすごい迫力、美しさで、身体を見ただけで日本選手の劣勢が分かる気がしました。しかし中距離、長距離になるとその筋肉がだんだんと削ぎ落とされ、日本人選手でもあまり見劣りしなくなります。それと短距離選手がほとんど黒人であるのに対し、中距離、長距離になると白色、黄色系が増えてくるのが面白く、筋肉の付き方に人種の違いがあるのかと不思議に感じます。
 私たちの身体の筋肉には「赤筋」と「白筋」の二種類があるそうです。赤筋は血液が運ぶ酸素で脂肪を燃焼させる「有酸素運動」により働く筋肉で、血の赤い色をしています。収縮速度が遅く「遅筋」とも呼ばれます。一方、白筋は酸素がいらない「無酸素運動」で働く筋肉で、グリコーゲンという糖質をエネルギー源にしています。収縮速度が速く「速筋」とも呼ばれます。長距離、マラソンの選手は息をしながら長距離を走り続ける必要があり、赤筋が発達しています。一方、短距離選手は100m、200mをほとんど息をしないで走り、筋肉は超高速で伸び縮みする必要から白筋が発達しています。マグロは大海を長時間泳ぎ続けることから酸素を運ぶ血液が大量に必要で赤く、脂肪を燃焼させることから脂がよくのっています。一方、ヒラメは普段は海底でジッとしていて、エサが来たときだけパッと瞬間的に行動することから血液による酸素はいらず、だから身は白く、脂分も少なくて味が淡白です(見た目はマグロが短距離選手、ヒラメが長距離選手に見えますが)。砲丸投げ、ハンマー投げの選手も瞬発力が求められることから、白筋が発達しています。しかし彼らに短距離が走れるようにも見えないことから、同じ白筋といっても使う筋肉が違うのでしょう。そういえば昔、スピードスケートの橋本聖子選手が夏に筋肉を鍛えるため、自転車競技にチャレンジしたことがあります。しかし自転車とスケートでは使う筋肉が違うということで、あまり効果がなかったようです。日本の短距離選手も筋肉を鍛えるため、いろいろウエイトトレーニングをしているようですが、そうして鍛える筋肉と走る筋肉とはやはり違うのかもしれません。そうでなかったら短距離にもっと白色、黄色の選手が増えてもいいはずです。
ところで筋肉というのは鍛えれば何歳になっても増やすことができるそうです。逆に使わないとどんどん減少し、疲れやすく、怪我をしやすくなると云います。しかも加齢とともに筋力の低下はスピードアップするので、高齢者がちょっとしたことで安静にしたり寝込むと、かえって筋力低下から歩けなくなり、「寝たきり」になりかねないと云います。加齢に伴い大きく萎縮するのは白筋です。瞬発力を必要としないからで、老化対策としては白筋(速筋)を増やすことが重要と云います。白筋を増やすにはグッと瞬間的に力を使うダンベルの上げ下げや、腕立て伏せなどが有効で、短時間でよいので毎日継続して鍛えることが大切です。寝たきりにならないためには赤筋(遅筋)を鍛えることも重要で、こちらはウォーキングなどの有酸素運動が有効です。

南雲吉則;空腹が生き方を教えてくれる、サンマーク出版(2013)
周東 寛;100歳まで寝たきりにならないための健康法、中経出版(2013)